恋人はサンタクロース!
崔 梨遙(再)
1話完結:1200字
あの人は、12月24日の夜、また私のマンションにやって来る。私は、麗子。普通のOL。彼は玄関から入って来る。煙突が無いからだ。
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。完璧な服装、完璧なメイクで待っていた私は急いで玄関のドアを開けた。去年と変わらない姿の彼が立っている。赤と白の衣装、180センチの長身。赤い衣装の中身が逆三角形の理想的な身体だということを私だけは知っている。
彼は、私の部屋に1歩入るとスグに私を抱き締めた。私も彼を抱き締め返す。彼は私にキスをする。そのキスが、ソフトなキスからディープなキスに変わるのに時間はかからなかった。やがて、彼は私をお姫様抱っこしてベッドの上に雪崩れ込む。
勢いで、まず1回、私は彼と結ばれる。1年振り、溜まっていた互いの性欲を吐き出した。私は彼に腕枕をされて、ピッタリと肌を合わせる。そう、彼はサンタ。12月24日の夜に来て、25日の夜には去って行く。一晩、1泊2日の逢い引き。1年で、たった2日間だけど、これでいい。1年に2日しか会えないと、最初からわかっていた上での付き合いなのだから。ちなみに、彼には髭は無い。“髭が嫌だ”と言ったらキレイに剃ってくれた。髭の無いサンタはかなりのイケメンだった。ちなみに、サンタの本名は次郎右衛門。
「1年間、他の女性を抱いてない?」
「当然だろ。麗子はどうなの?」
「誰にも抱かれてないわよ」
「年に2日しか来れなくてごめんな」
「それを承知の上で付き合ってるから、いいよ」
「俺達、何年付き合ってるんだろう?」
「数えないで、数えたくない。出会った時から比べると、私、きっとオバチャンになってるから」
「麗子は出会った頃から今も、ずっとキレイだよ」
「出会った時のこと、おぼえてる?」
「当たり前だよ、俺が腹が痛くてうずくまってるところに麗子が通りかかって、俺を介抱してくれたんじゃないか」
「まさか、本当にサンタがいたなんて、最初は信じられなかったけど」
「どこで本物だと信じたの?」
「トナカイのソリを見せられたら信じるわよ」
「そうか」
「ねえ、そろそろ」
「そろそろ? 何?」
「言わせないでよ」
そして私は次郎右衛門に抱かれ続ける。
翌日、25日の夜に彼は帰る。名残惜しくて、私達は長いハグとキスをする。私達は2日間抱き合い続けた。そして、また別れの時が来るのだ。また、1年間会えなくなる。0時、針が重なって25日が終わった時、彼はトナカイのソリで帰って行った。私は彼の姿が見えなくなっても夜空を見つめ続けていた。
「また、1年後かぁ」
サンタがクリスマスの間、ずっと麗子の部屋にいるようになったので、サンタはみんなにプレゼントを配る時間が無くなったのだった。
恋人はサンタクロース! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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