闇落ち魔女の妹は聖女様
春森千依
第1話 闇落ち魔女の妹は聖女様
ウィンダートン伯爵領の北端に、人外魔境の沼地がある。魔獣や魔物が闊歩するその地は枯れ木ばかりの林に囲まれていて、一度足を踏み入れると彷徨い歩くアンデットになると噂があり、おそよ人生を捨ててやけっぱちになった人間か、無知で怖い者知らずの愚か者くらいしか入らない。
その沼地は、近くの農村の住人たちからは『闇魔女の沼地』といい名前で呼ばれていた。沼地には傾いた塔があり、その塔に古くから闇魔術を極めた呪いの魔女が住んでいるという言い伝えがある。魔女や魔術の研究のために、この塔が使われていたことは事実だ。そのため、塔の中には実験室があり、先人の魔術書や、研究資料、異物が多く残されている。なぜ、それを知っているかというと、この魔女の塔を今現在受け継いでいるのが、この私、アデリア=ブルー=ウィンダートンだからだ。
季節は真冬。沼地は凍りついていて、降り積もった雪で林は白銀の世界と変わっていた。昨晩は嵐のような風が吹き荒れていたけれど、それも今朝になってようやく収まったのか、今は穏やかなものだった。
薪を焼べた暖炉で炎が揺れる。石壁の円形のその部屋が、私の研究室だ。魔術書の並んだ書棚が壁を囲っていて、中央の木のテーブルの上は研究ノートや書き散らしたメモ、計測具や実験道具で埋もれていた。この塔で暮らしているのは私一人。片付けをしろと口うるさく命令してくる人間もいなければ、顔をしかめる客人もやってこない。完璧かつ快適な私だけの城だった。手を伸ばせば届く範囲に、必要なものはすべてある。もちろん、紅茶とクッキーもだ。
暖炉だけでは底冷えがする部屋で、私は毛布を頭までかぶり、テーブルに向かって研究論文を執筆していた。王立魔術学校を首席で卒業した後、私は魔術協会に所属して、主に闇魔法、黒魔術といった人が顔をしかめそうな分野の研究に没頭している。
アーリストーラ王国では魔術研究が盛んで、王国から資格を与えられた魔術師が多くいる。魔力は誰でも持つわけではなく、神の寵愛と恩恵と言われてきた。主に魔術師が使うのは正統魔術だ。
呪術、魔族召喚、闇属性魔法、禁忌魔法などは忌み嫌われていて、使う者は闇落ち魔術師、あるいは魔女と言われて蔑まれたりもする。法を犯すようなことに手を染める者も多いからだ。当然、そんな危険な研究を行う者は魔術協会の監視対象になっていて、毎年、自分が行っている研究の詳細を報告することが義務づけられていた。
というわけで、私は目下、その報告書の制作を三日三晩寝ずに行っているところだった。闇魔術を研究する代償とはいえ、辛い、しんどい、もう投げ出したい!
報告書五百枚ってなに!? 本じゃん、本の執筆じゃんっ!!
あと、一週間で残り三百八十二枚書くなんて無理――死ぬ。
私はペンを握り締めたままテーブルに突っ伏し、「うううう~」と唸り声を漏らす。でも、ここを乗り切らないと年を越せない。新年になれば、王都で華々しく祝賀行事が行われる。マーケットでは骨董市も開かれるから、貴重な魔道具や魔術書、薬草類もバーゲンセールが行われる。それには絶対参加したい。去年、買いそびれたトロールの目玉を手に入れるっ!
そのためには、維持でもこの報告書を年内に書き上げなきゃならないのよ。
残り少ない力を振り絞り、頭を起こしてインク壺にペン先を浸す
我がウィンダートン伯爵家には二人の娘がいる。長女である私と、妹のユーリア=ブルー=ウィンダートンだ。実の所、世間で有名なのは妹のユーリアの方だった。十六歳になる我が妹は、産まれた時に教会から『救国の聖女』の予言を受けた。二百年前に建国されて以来、この国では聖女の刻印と呼ばれる紋様を背中に持って生まれてくる女の子が生まれる。その女の子は教会から救国の聖女と認められると、生涯に渡り国の祭祀を司ることになる。
簡単に言ってしまえば、その救国の聖女は癒やしと浄化の特殊な魔力を生まれ持って生まれている。その力で人々を救済するのが役目であり、国中の人々にとっては神に匹敵する信仰の対象ともなっていた。
そして、聖女に選ばれた者は、必ず二十歳になる前に王家の男子と結婚するという宿命も持っていた。聖女の力を王家が独占し、他の家に渡さないためでもある。というわけで、我が妹ユーリアは赤ん坊の時から特別扱いで、お父様もお母様も、それはそれは大事に育ててきた。もし、ユーリアに何かあれば、それこそ伯爵家にとって死活問題ともなる。五歳になる頃には教会に預けられて聖女教育を受け、十歳になる頃には王宮で王妃教育も受けるようになった。ユーリアはさすがに聖女様なだけあり極めて優秀で、周りが驚くほどの速度でそれらを全て完璧に習得してきた。癒やしの力では、歴代の聖女の中でも群を抜いていると言われている。その上、まるで女神の再来の如き容貌だから、すっかり歩く国宝扱いだった。
そんな聖女様の姉として生まれた私はというと、容姿は平凡、赤いくせっ毛で背も低い。小さい頃から本ばかり読んできたから猫背で、メガネをかけるといっそう地味で、陰気な風貌に見える。金糸のような髪にブルーの瞳を持つ妹とは、同じ両親の元に生まれたとも思えないとよく言われたりもしていた。
妹の境遇を羨ましいとは思わない。窮屈そうだし、大変そうだなと思うし、自分がユーリアのように完璧に振る舞えるかと言うと、絶対に無理だとわかっている。救国の志も特にない。ただ、幼い頃から逐一比べられることにはいささか辟易していたから、『妹が聖女様なら、私はその真逆の闇魔術を極めてみようじゃない』なんて捻くれたことを考えるに至ったわけだ。
伯爵家の図書室にあった闇魔術に関する本を、こっそり読んでいて面白そうだと思ってもいた。大人に内緒で試してみたこともある。泥から動く人形を作ってみたり、ちょっとばかり呪いの儀式なんてものもやったりした。
妹と違い、私は誰からも期待されていない分、自由にやりたいことができた。お父様もお母様もユーリアの面倒を見るのが忙しくて、私にかまっていられなかったからだ。私は一人で遊んで、一人で勉強していて、暇な時には悪さをすることもなく図書室に籠もっている。手のかからない子どもではあったから、ほとんど放置状態だ。
そんなわけで、自由気ままに暮らしていた私は、魔術学校を卒業後、両親に独立宣言を行い、この塔に引きこもって自分のやりたい研究に没頭する道を選んだ。両親は呆気に取られていたし反対もしていたけれど、私がさっさと荷物をまとめて出て行くと、それ以上うるさくは言わなかったし、連れ戻すことも諦めたみたいだった。それもやっぱり、妹のことで忙しかったからだ。
今さら、この快適な生活を放棄する気はなく、私はこうして塔に引きこもり、快適な日々を送っている。これも、聖女の妹のおかげだ。嫌みではなく、そう思っている。妹のことがなければ、今頃、貴族の娘に課せられた結婚という義務を果たすべく、夜な夜なアンデットのように徘徊して、夜会を巡って少しでもよりよい家柄の男を漁らなきゃいけなかったところだ。私は想像しただけでゾッとして身震いする。
お花みたなピンク色のドレスを着て、見知らぬ男と手を取り合い、ダンスを踊るくらいなら、箒を握り締めて火炎ドラゴンの巣穴に飛び込む方が百倍マシよ。
頬杖をついて、溜息を吐きながら『死霊の行動原理とその対処法』について執筆を続ける。そんな時、壁に吊していた来訪者を告げる鈴がチリンと鳴った。
こんな真冬に、客人?
心当たりもない。私は少し考えてから、ペンを置いて立ち上がった。
階段を誰かが上がってくる足音が聞こえる。その足音で、客人が誰なのかすぐにわかった。扉が勢いよく開き、兵士の服装を着た小柄な人が飛び込んでくる。
薄茶色のコートを羽織っていて、帽子を深くかぶっている。コートの下はズボンとブーツという恰好だ。
「アデリア姉様~っ!!」
そう言いながらガバッと私に飛びついた拍子に、帽子が落ちて金色の髪がフワッと広がる。「ユーリア!」と、私は彼女を抱きとめた。これが、我が国が誇る聖女様にして我が妹だ。
「あなた……また、脱走してきたのね……」
そうでなければ、今頃王都の教会で、祈りでも捧げているはずだ。ユーリアは「ううっ、だって、だって……」と目を潤ませる。寒いからか頬がほんの少し赤い。陶器のお人形さんみたいにスベスベの肌で、パッチリとした瞳は宝石みたいな青色だ。身長は私をとっくに追い越している。
「姉様、王都に来てくださるって約束をしていたのに、いつまで経っても来てくださらないんですもの! 手紙もいっぱい書いたのに、一つも返事をくれないし」
ユーリアは私にしがみついたまま、グスグスとはなをすする。私は「あー、そういえば……」と視線をさりげなく逸らした。
三日ごとに、分厚い手紙が送られてきていたのを思い出したけれど、忙しくて手紙ボックスに放り込んだままだった。
「も、もしかして、読んでないんですか!? 読んでないんですね!?」
ユーリアは部屋を素早く見回すと、手紙ボックスを見つけて手紙の束をつかみ出す。未開封なのを確かめると、恨みがましい目で私を振り返る。
「姉様…………」
手紙をクシャッと握り締めたユーリアの目にはいっぱい涙が溜まっていた。
「報告書を書くので忙しかったのよ! それが終わったら、まとめて返事を書くつもりだったから。本当だって。それに、あなたも忙しいだろうから、私の手紙なんて読む暇はないんじゃないかなーって」
「姉様からの手紙なら、他のどんな用事を後回しにしたってすぐに読むに決まってますっ!!」
私のそばに戻ってきたユーリアは、ズイッと顔を寄せてくる。可愛い唇がギュッと曲がっていた。
「わ、悪かったってば……ちゃんと書くから。来年までには……」
私は少し仰け反って苦笑いする。ユーリアは「絶対、絶対、絶対ですよ!?」と、詰め寄ってくる。私は「うんうん、絶対……書くってば」と、頷いてみせた。
「それなら、いいんです。姉様、またこんなに散らかして……ちゃんとご飯、食べているんですか? まさか、クッキーだけで生きているんじゃないでしょうね!?」
テーブルを見回して食べかけのクッキーを見ると、眉根を寄せる。わざわざ一つつまんで、傷んでないか確かめるようににおいを嗅いでいた。
「ちゃんと食べてるってば。そのクッキーもまだ食べられるわよ……ちょっと古いけど……お腹痛くなるほどじゃないし。カビもまだ生えてないでしょう?」
「やっぱり……っ!! だから、私は姉様が塔で暮らすのは反対なんですっ! 毎日、研究や実験ばかりで食事を摂らないんですもの。そんなだから、いつまでもちんまりしているんですよ! 私はそんな姉様も小動物みたいで愛らしくて可愛くて、ギュッとしたくなるからいいですけど……でも、やっぱり健康上よくないですっ!!」
ユーリアは私の両手をつかんで、真剣な顔をして見つめてくる。
過保護――。
一言で言えば、この妹はなぜか過保護だ。とりわけ、私限定で。
どうしてこんなふうに育ってしまったのかはわからない。お父様もお母様も、それはそれは大事に、真綿に包むようにして育ててきたはずなのに。私はそんな妹と、幼い頃から距離を取ってきた。面倒を見た記憶もそんなにない。私が手をかけなくたって、乳母や侍女が総出で面倒を見ているんだから、私の出る幕なんてなかった。
妹がちやほやされている一方で、私は一人で本を読んだり、実験を試みたりして過ごしてきた。それなのに、この妹は成長するにつれて、私のことを気に掛けるようになって、お父様やお母様以上に世話を焼こうとする。
私が塔に移住を決めた時も、真っ先に反対したのはユーリアだった。その頃はもう教会で聖女様として暮らしていたのに、両親から知らせを聞くやいなや、この伯爵領まですっ飛んで帰ってきたほどだ。あの時のユーリアの駄々のこね方といったら、それはすごかった。私が塔で暮らすなら、自分も塔に住むと言ってきかず、反対するなら聖女をやめるとまで言って周りをギョッとさせていた。最終的に、毎週手紙を書くということで納得させたけれど、こうして頻繁に王都を抜け出しては塔にやってくる。
私が塔で孤独死するかもしれないとでも思っているみたいなのよね。確かに、その可能性大な人生を送っているけれど、そうなったとしても私が自分で選んだ生き方なんだから放っておいてくれていい。悔いはないわ。
ユーリアはテーブルをすぐさま片づけにかかると、手際よくお茶を用意する。そして、持って来たバスケットの中身を広げ始めた。サンドイッチやビスケットがたっぷり入っていた。
「わざわざ、持って来たの?」
「もちろんですっ! 伯爵家の厨房を借りて作ってきました」
ということは、聖女様のお手製か。ユーリアはニコニコしながら、紅茶をいれて私の向かいに腰を下ろした。ちょうどお腹も減っていたから、ありがたくいただくことにした。燻製のお肉や野菜を挟んだサンドイッチは、マスタードたっぷりで私好みの味付けだった。もくもぐと咀嚼する私を、妹は頬杖をついて楽しそうに眺めている。
「ユーリア、あなたは食べないの?」
「姉様に全部食べてもらいたくて、作ってきたんですもの。あっ、ソースがついてますよ」
ユーリアは手を伸ばして私の唇の端についたソースをハンカチで拭ってくれる。
「子どもじゃないってば。お節介」
私は首を竦めて答えた。ユーリアは「フフッ」と、笑っていた。
どうして私みたいなのを気にするのかな。変な妹だわ――。
「それより、あなたはいいの? 塔までやってきて……みんな、捜しているんじゃない?」
言えば止められるから、黙って出てきたはずだ。今頃、王都の教会や王宮で、騒ぎになっているかもしれない。周りの者たちの苦労を思うと、姉として申し訳ない気持ちになる。
「いいんです。私を塔に行かせたくなくて、閉じ込めようとするんだから。それに、やるべきことは、全部片づけてきたんです。文句言われる筋合いなんてありません」
紅茶を飲みながら、ユーリアは不満そうに頬を膨らませる。それから、「姉様」とカップを置いて少しテーブルに身を乗り出してきた。
「やっぱり、私と一緒に王都に来ませんか? 冬の間は不便でしょう? 食べ物だって困るだろうし……寒くて風邪をひくたら困ります。新年のマーケットも見たいっておっしゃっていたじゃないですか。新年のお休みの間だけでもいいんですっ!」
目を輝かせて強請るように言ってくるユーリアを、「無理だってば」と紅茶を飲みながら片目で見る。
「やることがたくさんあるの。あなただってそうでしょう?」
聖女であるユーリアは、年末も新年も、教会や王宮で行事が目白押しだ。とてもではないが、私と一緒にマーケットで買い物をしている暇なんてあるはずもない。それに、私が行くような闇魔法の店に、聖女様を堂々と連れて行けるわけがないでしょう? 護衛の人たちが眉を潜めるわよ。
今も扉の外や塔の周りには護衛の騎士が待機しているはずだ。抜け出すにしても、ユーリア一人なわけがない。ユーリアの我が儘に付き合わされて、あの林と沼地を越えてくるなて、お付きの人たちも大変だ。魔獣に襲われたりしていないといいけど。
「身代わりを立てるから平気よ。ベールをかぶっているし、ちょっとの間別の誰かと入れ替わったってばれないもの」
「聖女様の発言とは思えないわね」
私はユーリアの鼻を摘まむ。ユーリアは両肘をテーブルにかけ、嬉しそうに笑っていた。
「それに忙しくたって、私と同じ部屋で寝起きすれば、夜はお話ができるでしょう?」
「私も教会で寝起きしろって言うの? 嫌に決まってるし、いい顔をされない。私がなんて呼ばれているか、あなただって知っているじゃない」
闇落ちの黒魔女よ――。
そんな姉と一緒にいるところを誰かに見られたら、ユーリアの評判が悪くなる。
「姉様を悪くいうようなやつがいたら、私が消し炭……オホンッ……とにかく、私の敵になりたい人なんていないんだから平気です」
「私が平気ではないの。それに、教会で闇魔術の研究なんてやってみなさいよ。魔術協会の監査委員が飛んでくるわ。出禁にされるのが関の山よ。とにかく、私は報告書を仕上げなくちゃいけないし、遊んでいるわけにはいかない。それをわざわざ、言うためにやってきたの?」
サンドイッチをつまんで頬張る。卵のサンドイッチは少し甘めの味つけで、これも私好みだった。ほんと、よくわかっているわね――。
「それもあるけど……もう一つ、重要な話があったんです。手紙にも書いておいたのに、姉様ったら見てくれないんですもの。いいわ、今、ここで話します」
ユーリアは溜息を吐いて体を起こす。
「実は、王都で最近、不審な事件が起こっているんです。姉様が興味あるかと思って」
「それって、闇魔術か何かに関する事件なの?」
「そうっ! この一ヶ月ほど、王都で人が不審死する事件が起きているんですけど……その死んだ人の額に、妙な魔法陣が刻まれているんです。釘のようなもので、おそらく描いたんだと思うんですけど……これがそれを描き写したものです」
ユーリアはポケットから折りたたんだ用紙を取り出して、私に見せる。
「魔術協会でも調べているんですけど、それがどういうものかまだ解明できていないみたいんです。死亡していたのは、みな貧民街の人たちでした。魔物に取り憑かれたんだと住民の間でも広まっていて、教会で魔除けのお守りを買い求める人も多いんえす」
私は「死因はなんだったの?」と、魔法陣を見ながら尋ねた。
魔族との契約を表す刻印には違いない。エスラ・エト・ルーラ・ギデオス……そう読めるけど、聞いたことのない魔族の名前だった。これに近い魔法陣なら、どこかで見たような気がするけれど。どこだったかしらねと、私は首を傾げた。
「それが火傷なんです。でも、不思議なことに皮膚に火傷の痕はないんです」
「どういうことなの?」
「血液が燃えたみたいに、体内が焼けているんです」
「血液が燃える……?」
私が眉根を寄せて聞き返すと、「ねっ! 姉様が興味を持ちそうな怪奇事件でしょう?」ときいてくる。
「まさか、事件で私を釣ろうと思ってる?」
確かに、これは私の好奇心がウズウズする事件だ。今まで血液が燃えるような魔術は見たことがない。
「まさか! 私はただ、姉様が知りたがるかもしれないなーって思っただけですってば。それに、住民の不安を取り除くのも聖女たる私の使命!」
ユーリアはキリッとした表情になり、自分の胸を叩く。いつも、『面倒、やだ、やりたくないっ!』と駄々をこねているくせに、どうして突然使命感に目覚めたのかしらね。
「まあ、いいわ……これは、やっぱり気になるし。王都に行くわよ」
私が溜息を吐いて答えると、ユーリアは「そうこなくっちゃ!」と嬉しそうに顔を輝かせる。やっぱり、私をおびき寄せる餌にしたわね、この子。私が怪しむような目を向けると、ユーリアはヘラッとごまかすように笑っていた。
報告書は、王都でまとめるしかない。私はサンドイッチを急いで口に押し込んで立ち上がる。ユーリアも紅茶を飲み干すと、「荷造り手伝いますから!」と喜々ととして立ち上がった。
闇落ち魔女の妹は聖女様 春森千依 @harumori_chie
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