転
必ずや邪智暴虐の社長を除かねばならないと。
しかし、それだけに
(今回の仕事、黒幕は社長かぁぁぁ!)
妹は心の中で大絶叫。
姉の
(アホか! 可愛い女の子が組んず解れつするからこそ、画に無限の可能性と価値が生じるのであって、その百合の空間に
理想を言えば、姉の
そんな百合の咲き乱れる
オヤジ臭漂う
(社長、あんたはあたしを怒らせた! その罪は海よりも深く、マグマ煮えたぎる程の憤りを感じる……。“
心の中に刃物を仕込み、社長をボコる事を決意する。
なにしろ、相手は紛う事なき
(社長、あんたは分かっていない……、分かっていない! そもそも
もう止まらない。
妹の熱量はいよいよ危険な領域へと突入する。
(耳の穴かっぽじって、よぉく聞け、ハゲ散らかした珍チンパンジーめ! 同性愛と異性愛の差はなんだ!? それは“連結箇所”の相違に他ならない! 異性愛は“穴と棒”で連結するのに対し、同性愛は“魂と魂”によって結ばれている! それこそ、究極の愛の形だ!)
止まらない。どうにも帯びた熱が鎮まらない。
目の前に姉がいなければ、感情をぶちまけ、壁にでも拳を叩き込んでいるだろう。
自制の要因は、あくまで姉がそこにいるからなのだが、姉が目視できない心の内は、もはや暴風に等しい荒れ模様だ。
(同性愛こそ究極の愛である事は、すでに古代ギリシャで証明されている! そう、最強の男達、
授業はちゃんと聞いておくものだ。
知識と言うものは、必ず血となり肉となり、知識を得た者を守る。
無知は罪であり、罪を免れたくば学ぶより他になし。
なお、妹の知識には偏りがあり、それゆえの偏見、偏狭も度し難いものであるが。
(そう、かつていたとされる神聖隊、まさに今現在の私だ! お姉ちゃんがすぐ側にいるからこそ、一生懸命歌えるし、踊れるし、臭い男共に笑顔だって振り撒ける! それはお姉ちゃんがいるから! そりゃ、『一緒にアイドルやろう!』なんて言われた時は、どうしようとは思ったわよ!? でも、お姉ちゃんがそう言うならって、一緒にユニット組んだわよ! お姉ちゃんと一緒なら、なんだってできる! むほぉ~、たまらん! 辛抱たまらん! あのスベスベお肌の可愛らしいお姉ちゃんにチュッチュしたい! スリスリしたい! むしろ、食べちゃいたいわよ! 可愛いは罪! 当たり前よね!?)
もはや一度芽生えた肉欲は抑えきれない。
何しろ、欲して止まない愛する者は、目の前にいるのだから。
(だがしかし、社長! あんたには失望したわよ! 『シスター☆クエスト』は姉妹だけで編成された、純真で、純粋な、姉妹の恋愛を具現化させた、究極の愛の形を示す場所だと思っていたのに……! あれか!? 育てたアイドルを食っちまおうって言う、低俗極まる発想の発現か!? そりゃ、お姉ちゃんは可愛いし、萌え豚どもがすり寄って来るのも分かる! でも、
被害妄想もここまで来れば、むしろ清々しいレベルではあるが、当の本人は正当な権利としか思っていない。
顔にこそ出してはいないが、すでに頭の中は『社長、許すまじ!』の文言で埋め尽くされていた。
(これは大仕事になる。今までにない規模での、超絶殺戮劇になる。近寄る男共を問答無用で薙ぎ払い、血だまりに沈めなければ……。かつて人類史上で類を見ない凄惨な粛正劇が繰り広げられる事でしょうが、お姉ちゃんを救うためだもの。オリンピックで使われる大型競泳用プール三杯分くらいまでの流血であれば、神様だって許してくれるわよ! ヘラクレスよ、我に加護あれ! ……って、ヘラクレスは半人半神だったわ。んじゃ、ゼウスか? それともアフロディーテかな、お祈りする先は? とにかくお願い、愛する者の守護神よ、オリンピアの神々よ、どうかお願いします!)
「あの、
「はひぃ!?」
自分の世界で爆走していた妹も、姉の一言で現実へと逆戻り。
危うく感情の渦に飲み込まれそうになっていたが、どうにか立ち直れた格好だ。
「お、お姉ちゃん、何!?」
「いや~、なんか思い悩んでいるみたいだったから、仕事断る?」
「いえ! むしろバッチコ~イです!」
「良かった! (犬派だから)猫が苦手かと思っていたど、大丈夫そうね」
「(妄想の中で
なお、性的な経験値はゼロであり、あくまで妄想の中だけのお話だ。
その無意味な自信も、妄想の中で姉を万回は犯している、事に起因する。
「お姉ちゃん、やっぱりさ、練習とかした方がいいかな?」
「練習? ん~、まあ、触り方一つで気持ちよくもなれば、怖がられて逃げる場合もあるし、初心者はちゃんと“心得”くらいはやっといた方がいいかもね」
「き、気持ちよく……」
「上手く触るとさ、もっとナデナデしてって、喜ぶんだよね。そうなったら、向こうからすり寄って来るわよ」
「ほ、ほほう。さすがはお姉ちゃん、経験豊富なのね……」
やはり姉は手強いと、妹は強く感じたが、すでに引き返す事はできない。
なにしろ、撮影の依頼が来て、しかも姉はやる気満々と来ている。
ここで自分だけ下がってしまうのは、あまりにも無様。
それこそ、“神聖隊”失格の烙印を押されるに等しい。
これ以上になく恥ずかしい行為であり、それに比べればAVの撮影なんぞ、児戯にも等しい。
(お姉ちゃんの期待を裏切るわけにはいかない!)
これに尽きる。
これが行動原理であり、成すべき事なのだ。
「それじゃ、
「ちょ! お姉ちゃん、まだ外、明るいよ!? 真昼間っからやっちゃうの!?」
「…………? そりゃそうよ。夜なら猫ちゃん、寝ちゃうじゃない。昼間の方が活発なのよ。それに、場所は近所の公園だし」
「公園!? すでに、スタンバってたの!?」
まさかの準備の良さに妹は絶句。
(くっ……、ここまで用意周到とは! まさか、お姉ちゃん、私がお姉ちゃんを食べようとしていたように、お姉ちゃんも私の熟れた体を求めて!?)
そうなれば、まさに万々歳。
相思相愛、究極で完全な姉妹へと昇華する道筋が出来上がったと言えよう。
しかし、そこに巨大な壁が立ちはだかる。
(ならば当然、お姉ちゃんは『我こそは
ここだけは譲れない一線。
姉は可愛がるものであって、可愛がられるものではないというのが持論である。
経験豊富(と勘違いしている)姉に対して、ちゃんとやれるかどうかは当然ながら未知数だ。
しかし、引き下がるという選択肢はない。
(やってやろうじゃないの! お姉ちゃん、見ててね! 今日私は大人の階段を登り、お姉ちゃんのいる高みを、更に飛び越えてみせるから!)
覚悟完了。
頭の中に『想い出がいっぱい』をフルボリュームで響かせながら、いざ決戦の地へと向かう姉妹であった。
なお、誤解は一瞬で溶けた。
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