第7話 バランス感覚の精霊エクイリブリウム

 ひかるが次の冒険に出発したとき、目の前には大きな橋が現れました。その橋は空中に浮かんでいて、左右に揺れているように見えます。


 「こんな揺れる橋を渡るの?」ひかるは不安そうに言いました。「落ちたらどうしよう…。」


 そのとき、どこからか穏やかな声が聞こえました。「ひかる、大丈夫。私はバランス感覚の精霊、エクイリブリウム。君が無理をせずに進めるよう手伝うよ。」


 振り返ると、ひかるの前に現れたのは優雅に立つエクイリブリウムでした。彼女は片足立ちでも微動だにせず、全体から安定した雰囲気を漂わせています。


 「まずは深呼吸して、自分の心と体を感じてみて。バランスを取るには、まず自分の状態を知ることが大切なんだ。」


 ひかるは大きく息を吸い、ゆっくり吐きました。すると、緊張が少しずつ和らいでいきました。




 エクイリブリウムはひかるに橋を渡る方法を教えてくれました。


 「橋を渡るときは、焦らずに一歩ずつ進むこと。それから、自分のペースを守ることが大切だよ。無理をするとバランスを崩してしまうからね。」


 ひかるはエクイリブリウムの言葉を思い出しながら、一歩ずつ慎重に進んでいきました。しかし、途中で風が吹き、橋が大きく揺れました。ひかるは足を止め、怖くなってしまいました。


 「エクイリブリウム、どうすればいいの?もう進めないよ…。」


 エクイリブリウムは落ち着いた声で言いました。「大丈夫、ひかる。立ち止まってもいいんだよ。無理に進もうとする必要はない。バランスを整えるためには、時々立ち止まることも必要なんだ。」


 ひかるはその言葉に安心して、橋の真ん中で一息つきました。そして、もう一度深呼吸をしてから、またゆっくり歩き始めました。




 橋を渡り終えたとき、ひかるは大きな達成感を感じました。


 「僕、できたよ!怖かったけど、自分のペースを守って進めた!」


 エクイリブリウムは微笑みました。「よくやったね、ひかる。心と体のバランスを取ることができれば、どんな困難でも乗り越えられるんだよ。」


 「でも、どうすればずっとバランスを保てるの?」


 エクイリブリウムは答えました。「バランスを保つには、自分の心と体の声を聞き続けることが大切だよ。無理をせず、自分を大切にすること。それが安定した未来を築く力になるんだ。」


 その言葉を聞いたひかるは、これまでの自分の行動を振り返りました。休む間もなく頑張り続けていた自分に気づき、少しずつ気持ちが軽くなっていきました。


 「これからは無理をせず、自分の心と体をもっと大事にするよ。」


 エクイリブリウムは満足そうに頷きました。「その気持ちを忘れないでね。ひかる、君ならどんな未来でも作り出せるよ。」




 ひかるが振り返ると、揺れていた橋はもうしっかりと安定していました。それはまるで、ひかるの心そのもののようでした。


 「エクイリブリウム、本当にありがとう!君に教えてもらったことを忘れずに、次の冒険も頑張るよ。」


 「その意気だね、ひかる。君ならきっと素晴らしい未来を築けるはず。さあ、次の精霊との出会いを楽しみにしていて!」


 こうしてひかるはエクイリブリウムと別れ、次の冒険に向けて歩き出しました。心には新たな安定感と自信が宿り、未来に向かう一歩がさらに力強いものとなりました。


 ひかるの旅は、まだまだ続きます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る