第13話 魔の森の逆襲−密猟者視点−
⸺⸺魔の森⸺⸺
人生チョロいもんだ。
事の始まりは7年前、金に目が眩んで立入禁止のこの森に足を踏み入れた事だった。
狩りを終えて森の出口へ向かうと、丁度見回りに来た見張りに捕らえられ、あっけなく牢にぶち込まれてしまった。
だけど俺の牢を尋ねてきた国王から極秘で仕えないかと話を持ちかけられ、この国王やってんな、と思った俺は2つ返事でその話に乗った。
それからは、取り締まる見張りのいない時間を教えられて、その時間内で狩りを終えるように狩り放題狩った。この森の魔物はなぜか攻撃して来ないため、国王の指定した地点よりも奥にさえ行かなければ、とんでもないレア素材を何の危険もなく狩れる超穴場だ。
ドロップアイテムは国王と山分けだったけど、それでも今までよりも格段に金を稼ぐ事が出来た。
「ふんふふーん♪」
さて、今日はどんなドロップアイテムが手に入るかな。鼻歌を歌いながら相棒のボウガンをクルクルと回して森の奥へと進む。
しかし、俺は異変に気付いた。
「あれ……おかしいな……」
どこだここ。俺は今一体どこにいるんだ。
この森は奥に行けば行くほど方向感覚が分からなくなり、出られなくなる。だが俺は全然奥には行っていない。ちゃんと国王の指定したポイントを守っている。
じゃぁ、何で俺は今迷子になっているんだ?
不安になり、早足で彷徨っていると、魔物のピクシーがスイッと目の前に現れた。
「こんな時にピクシーだと? クソ、とりあえず狩っとくか……」
ボウガンを構えようとすると、まさかのピクシーは言葉を発した。
『たった今オベロン陛下から掟削除の知らせがあったよ』
「は、はぁ? 何言ってんだてめぇ?」
『はぁ? 別にあんたに言ったんじゃないけど』
「何……?」
『ソウカ……喰ッテイイノカ……』
その声が聞こえた瞬間、背筋がゾクゾクと凍り付く。う、後ろになんかやべぇのがいる……。
恐る恐る振り返ると、俺の何倍もの大きさのあるドラゴンがのしのしとこちらに歩いてきていた。
「ひ、ひぃぃぃぃっ!」
何だあのドラゴン!? 今まであんな強そうな魔物になんて遭遇したことねぇぞ?
俺はピクシーを押し退けて必死に走って逃げた。ヤバい、あいつ喰っていいかって聞いてた。俺、喰われるんだ……!
逃げても逃げてもドラゴンは一定の距離を保って追いかけてくる。嫌だ、喰われたくない。
後ろを意識しながら逃げていたせいで、前の障害物に気付かずにぶつかってしまう。
「ぐふっ!」
しまった、行き止まりか。何にぶつかったのか確認しようとすると、俺の視界に入ったのは巨大な熊の魔物の腹だった。
『汚い顔押し付けんじゃねーよ』
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」
尻餅をついて、後退る。すると、今度は背中が何かにぶつかり、振り返るとそこにはさっきのドラゴンが俺を見下していた。
「ひぃぃ、ごめ、ごめんなさ……!」
俺の意識はそこで途切れた。
⸺⸺
「はっ!」
あれ、俺生きてる……!?
目が覚めるとそこは森から少し外れた草原だった。
「助かった……のか……ん? 何だこれ……」
腹に張り紙……?
それを読んでゾッとする。俺は、助かったんじゃない。これを国王へ届けさせるために生かされただけだ……!
⸺⸺ディザリエ国王。お前の雇った密猟者に狩られた魔物の数だけ、お前に天罰を下そう。密猟者。これを国王へ届ければ、命だけは助けてやる⸺⸺
俺は、半べそをかきながらディザリエ城へと走った。
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