Best Friend Exam
桜田実里
第1話 勉強、教えてくださいっ!
「うわ~あたし、今回やばいわ~」
「まあこの学校入って初めての定期試験だし……」
「なんでもうちょっと簡単にしてくれなかったのせんせ~!」
数学のテスト返しが行われている最中、ざわざわさわがしい教室内。
私・
「わ、わ、わ……」
目に飛び込むのは……答案用紙の端のほうに赤いペンで書かれた15の文字。
ま、ま、まさか……?
こ、これは、小計の間違い……だよね??
テストは、問題と解答が一緒になっているものが全部で三枚。これは、一枚目の合計……。いや、たった一枚の合計だとしてもなかなかまずいのでは15点は!?!?
おそるおそる二ページ目をめくると、一ページ目と同じ場所に、さっきとは明らかに小さい文字で"5”と書かれていた。
ごごごご5!?
ファイブですか!?
目の調子が悪いのかな? あれ?
続いて三ページ目を見ると、二ページ目と同じ大きさの文字で"1”と書かれている。
ま、まあ? 三ページ目なんて全部応用問題だったからねっ?
と、ということは、この"15”って……。
い、いや?
ちょ、ちょっっっとまって。
な、何かの間違いだよねこれは?
いやたしかに!! 問題を解いているときに! なんか難しいなあとか、解き方忘れちゃって答えが出ない〜! とか思ってたけど!!
現実を受け止めきれず、私はスッと答案用紙を静かに閉じた。
そして私は、ぐっと下を向いて頭を抱える。
脳内には、15の文字がぐるぐる……。
————ど、ど、どうしよう———っ!!
―――――――――――――――――――――――――――――――
その日の放課後。
テストが終わって部活動も再開され、爽やかな笑顔で部活やら下駄箱やらに向かうみんなの後ろ姿が……ま、まぶしいっ!
部活に入っていない私の放課後の予定といえば、カフェに行くとか、カラオケに行くとか……ではなく。そもそも私は、この5月上旬にもなって友達らしい友達が一人もいないのだ。
やっぱり、四月の時点で作っておけば……ちょっと乗り遅れちゃったかなあ……。
人がまばらになった教室で私はさっきの数学のテストをファイルから取り出し、静かにため息をついた。
正直、点数をもう一度見る勇気はない……。
うちの学校の中間試験では、赤点をとった人への補習や追試は一切行われない。
だから、期末で全力挽回するしかないのだ。
そうしないと、夏休み直前に進級ギリギリ命がけ追試験のお手紙が———!
ちなみに他の教科はというと、すべて平均か平均より少し下でいわゆる50、60みたいな微妙すぎる結果だった。
まあ、数学に比べればいいか……。
いやよくはないけど。とりあえずは数学を……っ。
とはいっても、友達作りに出遅れた私に、「勉強教えてー!」なんて手軽に言える人はいない。
塾にも行っていないし……。
「ああ、本当にどうしよう……」
思わず本音が口から出てしまう。
そのとき、ばさりと音がした。
紙が落ちる……音?
それに、手元が少し軽くなった感覚。
もしかしてと確認すると、数学のテストがいつのまにか二枚になっていた。
しかも、点数の書かれた一枚目がなくなってる!
えっ、まって、落としたっ!?
慌てて周りを見渡してみるけど、それらしき紙は……み、見当たらないっ。
いったいどこいっちゃったんだろう……と思ったら。
ここからだと少し遠いドアの近くに、それっぽいのが!
しかも点数が書いてあるほうが表に!!!!
見られたらまずいっ!!!
私はその短い距離を全力ダッシュして、テストを拾いに行く。
よ、よかった、誰にも見られずに済んだ———。
私はほっと一息ついてテストを拾おうとする。
そのとき。
私よりも先に、誰かの手がテストに触れた。
エッ。
ぺらりと音を立て、私じゃない何者かによってテストが拾い上げられる。
え、ちょ、え———っ。
点数、バッチリ見えてるけど!?
心臓がどきどきして、背中に冷汗が流れる。
おそるおそる顔を上げると……。
すぐ近くにあった目と、これまたバッチリと視線が合った。
「ア……あ……」
私はバッと視線を逸らす。
「……長野」
「は、はいっ!」
名前を呼ばれ、思わず返事をしてしまった。
でも怖くて、あ、相手の顔は見れないっ。
「これ、長野の」
目の前にスッと差し出されたのは、テスト。
しかも、デカデカと15の数字が書かれた。
「……あ、ありがとう、ございます」
恥ずかしいけど、お礼は言っておかなきゃ……。
と思っていたら、顔を無意識にあげてしまった。
テストを拾ってくれた人ともう一度目が合う。
————あっ。
「……じゃ、俺はこれで」
とんでもなく引きつった笑みを浮かべた"その人”は、教室を去っていった。
いやいや、せっかく教室に来たのに行っちゃうの!?
って、それは私のせいかっ。
「ちょ、ちょっと待って、
背中に呼びかけても歩みは止まらず、私は再びダッシュしてその人―――湯村くんに追いついた。
そして、その腕を掴む。
「え、なにしてるの、長野」
「ゆ……」
「ゆ?」
私は息を思いっきり吸って、言った。
「湯村くん! お願いします! 私に勉強、教えてくださいっ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます