## 第2話「遠隔指令」

# 境界系譜 -Cross Scene- モニタの向こう側で


## 第2話「遠隔指令」


「先生の...同じこと?」

工藤が、タブレットを抱えたまま困惑した表情を浮かべる。


御堂は、キーボードを軽くたたき、新しいウィンドウを開く。

「これを見て」


画面には、各放火現場周辺の人の動きを示すヒートマップが表示される。

そこに、不自然な規則性を持った人の流れが浮かび上がっていた。


「この点と点を結ぶ人の流れ」

佐々木が食い入るように画面を見つめる。

「まるで...プログラムされたような」


「ご名答」御堂が頷く。「この犯人は、他人を使って放火を実行している。しかも、その手法が...」


「人為的な群衆誘導」

佐々木が息を呑む。「私たちが研究している群衆行動パターンの応用ですね」


藤堂が眉をひそめる。

「どういうことです?」


「簡単に言えば」御堂が説明を始める。「SNSでの情報操作や、電子マネーの微額取引を使って、特定の場所に人を誘導している。そして、その中に、実行犯が...」


「でも、そんなことが可能なんですか?」


「可能です」工藤が画面に近づく。「僕たちの研究でも、人の流れは予測可能だって分かってます。タイムセールの情報を流したり、ポケモンGOみたいなゲームのポイントを置いたり...」


「そう」御堂が続ける。「この犯人は、私たちの研究を理解している。そして、それを犯罪に応用している」


研究室の空気が、さらに張り詰める。


「それだけじゃない」

御堂は、新たなウィンドウを開く。

「各現場でのWi-Fi接続記録を見て」


「これは...」

佐々木が画面を指さす。

「同じデバイスからの遠隔接続?」


「ああ。しかも、その接続パターンが...」


御堂は言葉を切る。

そこに映し出されたデータは、

彼らの研究室が開発した制御プロトコルとよく似ていた。


「まさか」藤堂が声を潜める。「内部の人間?」


御堂は、静かに首を振る。

「違う。これは...挑戦状だ」


モニタの青い光が、研究室の闇を照らし続ける。

その向こう側で、誰かが、彼らの研究を利用して、

静かに、そして確実に、事件を重ねていた。


---続く---

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2024年12月21日 19:00
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