スピード

Φland

スピード

ステアリングを薄く握り、アクセルを

踏みこんでいく。

僕のオンボロ車はあちこちガタガタ鳴らして

加速していった。

僕も車も、昨晩からもう長いこと走っている。


彼女が最後に言った言葉「あなたは自分で思うほど悪い人じゃないのよ。もっと自分に自信を持って」

ワオ、なんて月並みで、なんの慰めにもならない台詞。

こーゆー時、僕が何かの依存症ならどんなにいいだろうかと思う。

全部をそれのせいにして、それに溺れられたら、みじめだろうけど言い訳できる。


言い訳?そうだ、言い訳だ。

僕は彼女が僕より彼を選んだときでさえ、すごいスピードで言い訳を探していた。

本心は違う。僕という男は彼女にふさわしいと今でも思っているし、僕を選ばなかった彼女と彼女が選んだ彼が憎かった。


「そう、わかった、仕方ないね」

僕が言った言葉。

結局、言い訳なんてそう簡単に見つからない。

僕はこの行き場のない感情をオンボロ車に押し込んで、どこかに走って行くしかない。

スピードを上げながら。

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スピード Φland @4th_wiz_u

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