第3話 「水の都エルヴェリアと消えた届け先」
新たな配達依頼
「今回の配達先は、水の都エルヴェリア!」
ミーリスが差し出した依頼書には、美しい水彩画のような町の絵が描かれている。エルヴェリアは、異世界でも有名な水上都市で、運河や大理石の建築物が並ぶ観光名所だという。
「届けるのはこちら、特別な『青い真珠』です!」
ミーリスが手渡したのは、澄んだ青色に光る宝石。
「なんだ、この高そうなやつ……届け先は?」と翔太。
ミーリスが渋い顔をする。
「実は、その『届け先』が行方不明なんです。」
「は? 行方不明?」
翔太の困惑をよそに、ミーリスは説明を続ける。
「青い真珠の持ち主である“水の精霊・アクア”が、数日前から消息を絶っています。でも、精霊たちは必ず水の都のどこかに姿を現すと言われています。見つけて届けるのが今回のミッションです!」
水の都への到着
翔太とミーリスは、魔法カートを引きながら水の都エルヴェリアに到着する。町は運河が縦横に走り、ゴンドラが行き交う美しい風景が広がっていた。
「おい、ここすごいな。まるで絵の中にいるみたいだ。」翔太は思わず見とれる。
町を歩きながら、翔太は運河沿いの露店や住人たちに話を聞いて回る。すると、ある情報が得られる。
「ここ数日、運河の水が不自然に冷たいんだ。水の精霊が怒っているんじゃないかって噂だよ。」
「精霊の怒り? なんでだ?」翔太は首をかしげる。
精霊の秘密
運河をさらに進むと、水の都の中心にある巨大な泉へとたどり着く。そこで翔太は、青い真珠が淡く光り始めるのに気づく。
「これは……近くに何かいるのか?」
ミーリスが真珠を手に取ると、泉の水が静かに揺れ始め、やがて透明な女性の姿が現れる。
「あなたたち、誰ですか?」
それは水の精霊・アクアだった。だが、彼女の表情はどこか暗い。
翔太は慌てて説明する。
「お前にこれを届けに来たんだ。青い真珠、あんたのものだろ?」
アクアは青い真珠を見ると一瞬微笑むが、すぐに目をそらす。
「ありがとう。でも、私はこれを受け取るわけにはいきません。」
「どうしてだよ?」翔太は戸惑いながら尋ねる。
アクアはため息をつきながら語り始める。
「青い真珠はこの都の生命の源。でも、それを奪おうとする者がいるのです。私が持っていれば、彼らの標的になる……。」
都を守る決断
その瞬間、泉の周囲に水の波紋が広がり、突然現れたのは黒いマントに包まれた男たちだった。彼らは青い真珠を狙う盗賊団で、水の都の水源を支配しようとしている。
「渡してもらおうか、青い真珠を。」
翔太は咄嗟にカートを引きながら逃げ出す。ミーリスが魔法で反撃するが、数の多さに苦戦する。
「おい、これどうするんだよ!」翔太が叫ぶと、アクアが静かに言う。
「水は、守る者に力を貸します。」
彼女が両手を広げると、運河の水が激しくうねり始め、巨大な水柱が盗賊たちを包み込む。水流に押し流され、盗賊たちはどこかへ消えていった。
配達完了
アクアは再び青い真珠を手に取り、感謝の言葉を述べる。
「あなたたちのおかげで、この都の平和が守られました。ありがとう。」
翔太は肩をすくめて笑う。
「いや、俺はただ配達しただけだよ。でも……まぁ、少しは役に立てたのかもな。」
青い真珠が泉に戻されると、運河の水が一瞬輝き、都全体に澄んだ空気が広がる。住人たちは笑顔で感謝を伝え、翔太も初めて自分の仕事に誇りを感じた。
次なる冒険へ
ギルドに戻る途中、翔太はミーリスにぼそりと言う。
「なんか、配達って思ったよりすごい仕事なんだな。」
ミーリスは笑顔で答える。
「まだまだこれからですよ。次はさらに大きな依頼が待っています!」
次なる配達先は「天空の城」。空飛ぶ鳥人族への特別配送が翔太を待っている――。
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