実験:読んだら呪われる本
しゅんさ
始まりは突然に
「さて、ここで問題です!」
大学の同級生であり、天災(天才じゃない)の化身、有栖院有栖は、俺を見つけるなり大きな声を張り上げてきた。
「……なあ、有栖。俺には胸騒ぎってやつがしてる。お前がやる気になっている時にはロクなことがない。ものすごく嫌な予感がするんだが」
俺は経験上わかっている。この美貌と金と天才性を持て余した有栖院有栖という人間に関わると、俺の平穏な日常は跡形もなく吹き飛ぶということを。
この女、有栖院有栖はとんでもない美人だ。誰もが認める超絶美人。10人に聞けば13人が「美人だ!」と答える、そんな世界クラスの顔面偏差値を持った相手だが、俺が本気で戦慄するのはその頭の中身である。常人の思考速度を4、50倍の速度でぶっちぎる脳みそに、財閥の総裁の孫というチート設定を追加装備。こんなキャラと付き合わされる凡人の俺の立場、わかるか?
「読んだら呪われる本って本当にあると思うか?」
「いや、やめろ。聞きたくない!その続き、絶対に聞きたくない!」
「だが!私は手に入れてしまったのだ。これがその呪いの本だ!」
目の前に突きつけられたのは、妙に年季が入った和綴じの古書だった。
「天明2年刊行、約240年前の骨董品だね!とあるお寺の奥の奥に厳重に封印されていたのを私がお願いして譲ってもらったんだ!どう、すごいでしょ?」
「すごいね。でも俺は感想よりも自分の命を優先したいよ」
「えー、逸話によると、これを書いた作者さんは藩のお殿様にものすごい怨みを抱えていたみたいでね、これを読んだというお殿様と家老と重臣と女中と、あとはお寺に預けられてからもうっかり開いた人々と合計で20人くらいは憑り殺しているというマジでやべー代物だ。」
「ねぇ、なんでそんなヤバい物を大学なんていう不特定多数が集まる場所に持ってきてそうやって手で持ち歩いているの?馬鹿なの?」
「というわけで私はこの本に大変興味がある。でも私だって呪われるのは嫌だ。そこで、君の助けを借りようと思うんだ」
有栖院有栖には「諦める」という選択肢はない。そして俺は、またしても巻き込まれる運命にあった。
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