レベル上げ
こうして思うと、僕の物語しょぼすぎん……?
蛇に転生し、レーヴたんに拾われるまでの物語を回顧した僕は自分で自分にツッコミを入れる。
訳も分からず転生し、犬っころに殺されそうになっただけやぞ。
しょぼない?なんか。
「きゅーっ」
これまでの道のりを振り返った僕は自分のスケールの小ささに少しばかりしょんぼりとする。
「きゅーっ!」
いや、違う。
僕の物語はここから始まるのだ。ここから、ここから壮大にしていくんだっ!
王女を助ける畏きドラゴンの伝説をこれから紡いでいくんだ……!
「きゅー、きゅ」
レーヴたんのおっぱいを堪能した後、そのレーヴたんの悩みを取り除くために異常発生した魔物を討伐するため、王宮を飛び出している僕は道を進みながら、改めて自分の覚悟を固める。
「……きゅー」
まっ、今の僕にそんな強さはないけどね!
僕は確かに、異常発生した魔物のいる村の方に向かっている───ただし、実際にその村の方にたどり着くのは数週間後とかになると思う。
というのも、まだ僕は転生したから一週間くらいしか経ってない。
全然、問題を解決できるほどの強さはない。一週間経った僕のステータスはこれである。
◆◆◆◆◆
名前:ノア
種族:ポイズンベビースネーク
レベル:4/5
ランク:G
称号:『竜の卵』
攻撃力:4
防御力:3
魔法力:1
俊敏性:5
固有スキル:
『鑑定』
スキル:
『毒息』『かじる』『逃げ足』
◆◆◆◆◆
レベルが上がり、微々たる成長を遂げた。
以上である。攻撃力が2上がり、俊敏性が1上がった。これだけ。
こんな状態で、異常発生した魔物の問題を解決するなんて無理に決まっている。
まだまだ、僕は強くなる必要があった。
せめて、一回くらい進化したいよね。
多分、このレベルが5/5になったところで進化出来るんだと僕は勝手に思っている。
「きゅーっ」
ってなわけで、レベルをもう一つ上げるため、僕は王都の近くにある平原へとやってきていた。
この平原には僕と同じGランクの弱い魔物が出てくるのだ。
ここで僕はレベル上げをここ一週間、やってきたのだ。
「(鑑定)」
僕はスキル、鑑定を発動。
ただ適当に平原全体を鑑定する。特に鑑定先をピックしていない僕の鑑定であるわけだが……。
《スライム》
《Gランクの魔物。特に何かをしたりすることはない無害な魔物。ただ時折、非常に有害で、爆発的な進化を行う個体もいるため、少しでも異常な行動を行う個体が居れば討伐することを推奨されている。》
《一角兎》
《Gランクの魔物。すばしっこい動きと脳天の角による突撃攻撃が特徴的な魔物。肉が非常に美味であり、非常に人気が高い。ただの農民が肉目当てで狩ろうとすることもある。魔物と言えどGランク。農具のみで戦うことも可能であり、油断しなければ農民でも狩れる》
《ポイズンベビースネーク》
《Eランクの魔物であるポイズンスネークの幼体。非力で特に特筆すべきところはないような警戒する必要もない魔物。相手を痺れさせるスキルを持っているが、ほとんど効果が無きに等しいようなものである為、これもまた、警戒する必要がない》
ポポっと平原内にいる魔物たちを鑑定が導き出してくれる。
非情に便利なスキルだ……この中で、一番近いのは一角兎かな。
「……きゅーっ」
気分は獲物を狩りに行く蛇そのもの。
僕はそーっと気をつけながら平原を進み、少し離れたところにいる一角兎の方に向かって行く。
「プープー……ブッ!」
「きゅーっ」
その途中で、一角兎はこちらへと気づく。
僕の隠密行動はまだまだだった。
「ブッ!」
僕の存在に気付いた一角兎……それは、真っすぐに僕の方に向かって突進してくる。
前世の草食動物である兎のことを思い出すと考えられないような行動だが、魔物である一角兎はとりあえず生命を見つけた瞬間に突撃していくようなバーサーカーだった。
だからこそ、こいつは狩りやすいわけだが。
「(毒息)」
僕は一角兎がすぐ自分の前にまで来たところでスキルを発動し、自分の口から毒息を吐く。
人間に当てたところで大した効果もないらしい毒息。
ただ、同じGランクの魔物である一角兎にはある程度効く。
「キーッ!」
一角兎は悲鳴と共に体を痺れさせ、その動きを止める。
それを狙い、僕はすぐさま蛇らしい長い胴体を生かして小さな一角兎の全身を締めるように巻き付いていく。
「キーッ!?」
全力で全身に力を込め、僕は一角兎を絞め殺そうとしていく。
「きゅーっ!」
そして、その首元へと己の口を大きく開けて牙を突き刺す。
蛇となったからだろうか?この一連の動きに僕は特に忌避感を覚え、躊躇うような気持ちには一切ならなかった。
「……キー」
全身を締められ、首に牙を突きつけられた一角兎は弱々しい悲鳴を漏らした後、その体から力を抜かせる。
これで、討伐は完了である。
「きゅーっ!」
倒した一角兎の元から離れる僕はそのまま、勝利の鳴き声をあげるのだった。
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