最強王竜(蛇)転生!~転生したのはクソ弱い蛇だけど、世界最強となって自分を拾ってくれた亡国間近のお姫様を立派な女王にさせたいと思います!~

リヒト

プロローグ

 総人口8000万人を超えるナーロッパのとある小国、ミノワ王国。

 人口は十万人ほどしかいない小規模な国家であるそこは、国内資源が乏しい上にろくな産業もないようなところだった。国民は細々とそれほど豊かではない土壌を開拓して農業を営む者たちがほとんど。当然税収は雀の涙ほどで国家に金はない。

 そのため、国を豊かにするための内政による国家の改革は望めない。

 軍事力による改革はもっと望めない。

 国を豊かにしようと思っても、その原資となるお金がミジンコほどもなく、何の改革も行えない小国。

 それがミノワ王国だった。


「……はぁー」


 何かの拍子で吹いて消えてなくなるようなミノワ王国の王宮の執務室に、一つのため息が吐かれる。


「世界情勢が、中々に厳しいです……っ。我々の国を吹き飛ばす何か。その軍靴の足音が今にも聞こえてきそうです」


 ため息とともに告げられる未来への憂慮。

 それが吐かれるのは小さく、赤い艶やかな口。まだ幼い少女の口だ。

 ミノワ王国の執務室。

 国の頂点である国王が座り、国家を運営する大切な執務作業を行っていくためにある執務室の席には今、まだ成人してはいないであろう一人の少女が座っていた。

 

「どうしましょうか……国際情勢が乱れれば、その余波だけで全然死ねます。そもそもとして、そんな余波なんて関係なく普通に倒れます。どう、しましょうか」


 年としてはおそらく、十五歳程度。

 それくらいの齢であろう少女が今、国のトップが座るべき席に座り、ミノワ王国の将来について真剣に考えていた。


「きゅー」


 そんな中で、僅かに開けられていた執務室の扉の隙間を通って、一匹の小さな蛇が悩んでいた少女の前に顔を出す。


「あっ、ノアちゃん。いらっしゃいっ」


 その蛇の姿を見た瞬間、これまで苦悶に満ちていた少女の表情が一段と明るくなる。椅子から勇み足で立ち上がった少女はその蛇に向かって自分の手の平を差し出す。

 

「きゅー」


「ふふっ」


 そして、自分の手のひらの上にのそのそと乗っかった蛇を持ち上げ、そのままその蛇を育ち盛りの自身の胸の上に置く。


「私はまだ仕事しなきゃいけないので、そこで我慢していてくださいね?」


「きゅーっ」


「よしっ!私も頑張らないとですねっ!」


 蛇を自分の胸の谷間に挟んだ少女は再び席へと座り、握りこぶしを固めて気合を入れ直す。


「お父様の代わりに、この国を守らないとっ」


 ミノワ王国の国王たるカランダ・ロワンソール。

 ロワンソール王朝の第十二代目の国王であるその男は今、病によって寝たきりの状態になってしまっていた。

 だからこそ、その国王の娘であるレーヴ・ロワンソールが未だ未成年でありながら、その寝たきりの父に代わって国王としての仕事をこなしていた。

 明らかに歪んでいる。でも、それしかなかった。国王の子供はその娘一人なのだから……。

 レーブはその胸に自身が飼っている蛇を大事そうに抱えながら、その幼い体でめいっぱい努力し、国の為に尽くすのだった。


 ■■■■■


 極楽や、極楽やっ!

 おっぱいの感触が最高やっ!


「お父様の代わりに、この国を守らないとっ」


 自分の飼い主であるレーヴたんの谷間の中で、僕は今の夢心地を堪能する。

 己の感触から伝わってくるたわわに、幸せをもたらす良きレーヴたんの匂い。

 それを僕はこの場で堪能し尽す。


「えーっと、……うぅ、ここはどうしましょう?魔物の異常発生が起こっているみたいですけど……それに対してこちら側から出せる戦力は無きに等しいですよ」


 それにしても、相も変わらずこの国の現状は終わっているなー。

 特等席でレーヴたんが行っている国の執務作業を見ている僕は率直な感想を抱く。


「……いや、本当にどうしましょう。流石に無視するのは……」


 どうやら、ここから少し離れた村の近くの森で魔物の異常発生が起きたらしい。

 そんなわけで、その村がこの国に対して討伐を依頼。

 それを受け、この国を守るべき騎士団がこの事案に対する対応策として、動かせる人員はゼロなので放置するしかない───という旨が書かれた報告書をレーヴたんの元にまで持ってきていた。

 異常発生した魔物の討伐依頼。そして、それに対する動かせる人員はゼロであるという絶望の報告書。

 その二つを前にするレーヴたんの表情は苦悶に満ちていた。

 仕方ない……ここは僕が動いてあげますか。


「……きゅーっ」


 もっと、もっとレーヴたんのおっぱいを堪能していたい。

 とはいえ、だからと言って、僕が頑張っているレーヴたんを他所に、ずっとくつろいでいるわけにもいかない。

 レーヴたんに飼われている一匹の愛玩生物として、彼女を悩ませている問題である魔物の異常発生を解決してきてあげよう。

 僕はスルスルとレーヴたんのおっぱいから抜け出し、そのまま執務室の床に着地する。


「あら?もう行くんですの?」


「きゅーっ」


「王宮の外には行っちゃ駄目ですからね?」


「きゅーっ」


 それは悪いけど、守れない。

 僕はこれから、魔物の撃滅に行かなきゃいけないのだ。

 

「お外は危険がいっぱいなんですから。ただの蛇であるノアちゃんでしたら、すぐにパクッてされちゃいますからね」


「きゅーっ」


 確かに、一見すると僕はただの蛇。

 でも、その実態は違う。

 僕は蛇でありながらも、人と同じ思考回路を持った一人の存在。日本からの転生者だった。

 そんな僕は己の道徳心的に看過できなかった。自分を飼っている国の為に頑張っている可愛らしい少女であるレーヴたんが悩んでいる中で一人、おっぱいの感触を堪能するだけの日々を送るのは。

 だからこそ、僕はレーヴたんを悩ませる元凶である異常発生した魔物の討伐を胸に、執務室を飛び出した。

 

「きゅーっ」

 

 あの時に受けた恩もあるしね。

 日本人であった僕が如何にして蛇へと転生し、この国の王女様であるレーヴたんに拾われたか……その壮大なストーリと、そのストーリーの間に受けたレーヴたんからの恩。

 それを思い出しながら、僕は異常発生した魔物のいる村の方に向かっていた。



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