魔法
魔法とは何か。
それはまだ厳密な理論として解明されていない、不可思議なものである。
広く知られているのは魔力を込めた詠唱により、世界へと自分の声を届け、世界を変えるというプロセスのみ。
魔法に詳しい人、研究している人になれば、もっと詳しいものを知っているだろうけど……ほとんどの人はふんわりで魔法を使っている。
「普通の魔法と精霊魔法の違い。これは結構私の中で疑問でな。精霊様が私たちの声を聞き、それを大きくして世界に届けるのだというのなら、何故、精霊魔法よりも一般魔法の方が効果高いことがあるのか。おかしな話ではないか？」
「それに関しては一応、その魔法使いの声が、精霊魔法を使った術者と精霊の声を合算したものよりも大きかった、と考えれば一応説明はつく」
「そんなことあり得るのか？これが際立った魔法使い……というならまだ納得も出来るが、普通の魔法使いであってもこれくらいのことはしてくるんだぞ」
「……うーん。それもそうですね。確かに僕も疑問です。これに関しては元素が関係していると思うんですけどね」
「元素……元素か？」
「はい。そうです」
「元素はあれだろう？世界が詠唱を聞く際の耳となるもの」
「えぇ、そうです」
「……その元素がどうしたんだ？あれに関して、何か特別なものでもあるのか？」
「いや、まだまだわからないんですけど、精霊が元素の力を持っている。と仮定するならば、精霊魔法とは……世界に声を届ける魔法ではないんじゃないでしょうか。精霊魔法とは、精霊その人に声を届け、魔法を使ってもらう術なのではないでしょうか？」
「いや、流石にそれは……魔法とは世界に声を届けてようやく発動するものなのだ。いくら精霊様でも、この世界を捻じ曲げることは出来ないだろう」
「……うぅん」
仮説は立てられる。
でも、自分が一番しっくり来ている仮説は話が大きくなりすぎるし、突飛すぎるんだよな。
もっと、現実的な仮説を立てる……うぅん、でもなぁ。
「難しいね。まだまだわからないことだらけだ」
「うむ。そうであるな。エルフの寿命は長い。かくいう私ももう数百年と生きてきた。その中で、魔法とは何か。それについても考えているのだが……未だ、答えらしき答えは出せておらぬ」
「死ぬまでには答えを出したいものだね」
「出せるなら、私にも教えてくれ」
「えぇ、もちろん」
僕は、これまで自分の魔法に関する話で盛り上がっていた相手……自分の推しであるエルフの女王の言葉に頷く。
「ふふふ……こんな風に魔法について会話出来る相手というのは珍しい。魔法の研究というのはメジャーではないからな」
「まぁ、便利過ぎますしね。でも、この研究をすることによって、より強い魔法を使えるんですけどね？どうすればもっと、世界が応えるか。それを知る行為になりますし」
「違いない。だが、それはあまり知れて欲しくもないな。
「ハハ！確かに国家を運営する側はそうかもしれませんね？まぁ、自分は興味関心の方が強いので、
ふぉぉぉぉ！推しと、僕は今！オタク談義をしている！
僕も、相手も、魔法が好き。
それについて盛り上げる。間違いない。オタク談義だ。
僕はテンションをあげながら、言葉を交わしていく。
「っとと。盛り上がりすぎたな。そろそろ公務に戻らなければならん」
「あっ……そうですか」
「ふふふ、そう悲しそうな顔をするではない。いくらでもまた、話せる。ではな。また今度」
「え、えぇ……！」
推しと次の予定を組めた……そんな感動を胸に抱いた僕は、この図書室から去っていく女王の姿を見送る。
「……」
そんな僕はしばらくの間、推しとの邂逅の余韻に浸っていた。
「ふぅー」
そして、その感動を胸に仕舞い、余韻を下げた僕は自分の手をまた、魔導書の方に伸ばす。
推しと談話するのはいい。
でも、その肝心の推しからの期待。それにもちゃんと答えないとね。
やっぱり、実際の推しに会うとテンションの上がり方も違う。しっかり、やろう！やらなきゃ！という気持ちなれる。
「さてと」
それにしても、この世界の魔法は意味わからないよなぁ……魔力を乗せ、起きて欲しい事象を告げる。
それだけで世界が応え、奇跡を起こしてくれるなんて。
あまりにも楽過ぎるでしょ。
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