金策

 というわけでやってきました、王都。


「らっしゃい!らっしゃい!安いよ!安いよぉ!御野菜安くしているよー!」


「誰かー!?誰か、私の魔道具を買ってくださる人はいませんかっ!?明日食べるものもないんですぅーっ!?」


「さぁさぁ!ここにありますは天下一品!伝説の竜の宝玉にございます!」


 人々の喧騒が喧しいここ、今世における僕の生まれ故郷であるトワライト王国における王都、アルカンティアは世界でも屈指の大都市である。

 当然、王都内で暮らしている人口はかなり多く、それに伴い、商いを行っている人もかなり多かった。


「いやぁー、来たね。王都」


 僕はその王都の街並みの方に軽い変装を施し、ボハテルだけ連れて繰り出していた。


「あぁ、来たな。それで?この王都で何をするつもりなの?兄ちゃんも親父さん、お前さんに礼儀作法とかの確認を従っていたぞ?それをガン無視決めて込んで、街に繰り出して何をするの?観光か?」


「金策だよ。それ以外やることがあるわけないじゃん」


 王都であれば一発稼ぐことだって出来るだろう。


「金策ねぇ……そんなこと、本当に出来るの?」


「もちろん」


 しっかり、僕は商売の基本である需要と供給の概念を理解しているとも……。あれやろ?需要があるところに、供給を売ればいいんだろ?実に簡単な話じゃないか。


「ほんとかなぁ?」


「まぁ、見てな、って」


 僕はその場を軽く見て回り、この王都を歩く人たちの様子を確認する。

 そして、僕は辺りをきょろきょろとしながら、少しばかり困っていそうな女性へと目につける。


「お姉さん、お姉さん」


 僕は迷いなく目をつけた女性、お姉さんの元へと近づき、声をかける。


「……んっ!?わ、私?」


「そう。お姉さんだよ。お姉さんは観光客かな?」


「えっ!?よくわかったね!?」


 僕が目をつけたお姉さんは明らかに観光客でっせ、という雰囲気を見せていた。

 荷物とか、この王都に慣れていない感じとか。全部がもう明らかだよ。


「ふふっ。それで、はい。僕はそんなお姉さんに売りたいものがあるんだよね」


 そんなお姉さんに対し、僕は一つの紙束を取り出す。


「この王都の旅行ガイドだよ。これでお姉ちゃんの観光も捗ること間違いなし!って逸品だよ」


「……が、ガイド?」


「うん。地図付きだよ」


「えっ!?地図!?」


 最初は反応が芳しくなかったお姉さんも、次の僕の言葉を聞いた瞬間に驚愕で目を見張る。

 まぁ、それもそうだろう。

 前世なら調べれば簡単に調べれば出てくる地図だけど、この世界じゃそういうわけにもいかない。地図だって貴重なものなのだ。

 地図なんて普通に重要な軍事情報だからね。


「ど、どうやって作ったの?」


「歩いて作ったよ。だから、当然。自分のような平民が行けない貴族街とかは空白だし、その他、施設もところどころ空白なところ付き。でも、観光にはこれくらいで十分って感じで作れているよ」


 その王都の地図を僕は怒られないレベルのクオリティーで作り、ガイドに載せている。

 これの貴重性は結構高いでしょう。


「な、なるほど。ちょっと見せてもらってもいい?」


「もちろん」


 僕はお姉さんの言葉に頷き、自分の品を見せる。


「……これ、ほんと?めちゃくちゃしっかり作られていない?」


「そうでしょ?」


 そりゃそうでしょ。この地図は僕が適当に王都の地図を見て作ったものだもの。

 この国の貴族である僕は普通に地図を閲覧する権利も持っている。


「どう?買っていく?」


「いくらかしら?」


「銀貨一枚かな」


「……えっ?ちょっと高くない?」


「でも、地図つきだよ?せっかくの観光。楽しめた方が良いんじゃない?ここは魔境だよ。人がいっぱいで、色々な詐欺師も多い。だからこそ、ちゃんとお金を出して買うべきだと思うんだよね。僕はまだ若いけど……ずっと、ここで過ごしてきたんだ。孤児院生まれだけどね?この王都を走り回り、色々なところを見ていた僕が作ったこれはかなりしっかりしたものであるという自負もあるし、だからこそ、お姉さんにも売り込みの段階で結構見せているんだよ。孤児院生まれとして、神の名に誓って、詐欺なんてしないと誓うよ」


 僕は一から百まで。

 ほとんど嘘八百を並べて売り込んでいく。


「確かに、私にとってこれは必要なものだものね……うん。そこまで言われたら仕方ない。言い値で買うよ。いいものであるのは間違いないでしょうし」


「毎度あり!」


 僕は金を受け取り、サクッと魔法で作ったガイドを売り渡す。


「ありがとねぇー」


「はーい」


 流石は観光客。

 こんなところにまで来れた女だ。金はたんまりと持っているな。

 普通に強そうだったし、凄腕の冒険者とかでしょ。

 いい感じにお金を稼げた。


「あ、あくどぉ」


 ホクホク顔の僕に対し、その隣で商売の様子を見ていたボハテルが震えた声を上げる。


「何を人聞きの悪い。別にあのお姉さんだって損はしていないよ。貴族が作っているんだよ。質はちゃんと担保されているよ」


 ちなみに、このガイドを作る時にそこらへんの店を回り、このガイドに載せる代わりに対価を貰うような契約までしっかりと結んでいる。

 このガイドが売れれば売れた分だけ、お金がもらえるシステムだ。

 完璧な商売。

 えっ?質はどこに行った?ただのやらせじゃないのか、だって?知るか、そんなもん。


「さっ、この調子で売っていくよ」


 ここは世界的に有名な王都。

 観光客は結構多い。

 このガイドを売る先は結構ある。

 意気揚々と、僕はこの王都へと繰り出していった。

 

 ……。

 

 …………。


「……あん?」


 順調にガイドを売りさばき、着実にお金を積み重ねていきながら王都を駆け巡っていた僕。


「どうしたんだ?」


「ちょっと……少し、怪しげな奴がいて」


 そんなことをしていれば、この王都にいた怪しげな奴を一人や二人見つけることだって出来る。


「金策二個目と行こうか……」


 犯罪者を捕まえる。

 これも、実は結構お金になるということを見せてあげましょうか。

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