王都

 ボハテルを購入してから一週間ほど。

 僕はこの期間、強くなること。この一点に力を入れて過ごしていた。

 前世の記憶が混ざったことによって鈍ったロイドという天才性による魔法の腕。それを取り戻し、更に磨く。また、前世の知識を利用した魔法の発展。

 これらを組み合わせるだけでなく、基礎的な肉体的訓練も行うことで僕は地道に強くなっていた。

 前世とは違って人の命の価値が低い異世界という場で、強さはいくらあってもいいからね。


「な、何で魔法を同時に発動とかできるんだよっ」


「僕だからね」


 そんな僕の道程。

 そこにボハテルは不可欠だった、そう評してもいいくらいには頑張ってくれていた。

 今もこうして、僕と模擬戦を行ってくれている。


「……そ、それで?その魔法たちをどうするつもりなの?」


 冷や汗を垂らし、体を震わせているボハテル。


「いや、ボハテルに当たるに決まっているじゃん」


 そんなボハテルの前に居る僕はもう既に攻撃するための準備をすべて終えていた。


「全部避けられるかな?」


 僕は同時に十もの魔法を発動させ、一気にボハテルのいた場所を焼き払う。

 炎が、雷が、風が。

 数多のものがボハテルの悲鳴を轟かせ。


「ぎにゃぁぁぁあああああああああああああ!?」


 ボハテルの悲鳴をこの世界に轟かせさせた。


 ■■■■■


 合計で十もの魔法を一度に食らったボハテルだけど、彼女が得意としている結界魔法。

 それを駆使して防御姿勢を取ることにより、何とか大怪我でボハテルは済ませていた。


「……うぅ。なんであんな大怪我の後にあたしは馬車に乗せられているんだ」


 その大怪我を回復魔法で治してから十分後。

 ボハテルは僕と共に馬車へと乗り、体を揺られていた。


「王都に行くんだよ」


 ボハテルの前に座る僕は彼女の疑問に答える。


「……王都?」


「そっ。王都だよ。呼ばれちゃったんでね」


 王都にいる王族の方から僕……というよりはラインハルト家の当主である僕の父が呼び出されていた。

 その付き添いという形で僕も同行する形だ。ボハテルはその僕の付き添い。付き添いの付き添いだ。


「ふーん。まぁ、あたしには関係ねぇか。ところでさ、何で兄ちゃんは同時に魔法を発動できるんだ?魔法の発動には詠唱が必須。同時発動なんて不可能なはずだろう?」


 魔法の発動。

 そのプロセスを滅茶苦茶簡単に言うのであれば、魔力を込めた言霊を発することで世界に干渉し、世界を捻じ曲げる。こんな感じになるだろうか?

 口に出して願うだけで世界の法則がねじ曲がってしまうのがこの世界だ。

 ってなプロセスなわけで、魔法の発動には詠唱が必須。

 そのため、確実に魔法の発動には必ず口が必要となってくるために魔法は必ず一度に一つしか使えないというのが常識となっている。


「企業秘密」


 そんな中で、僕は普通に同時に幾つも魔法を発動させることが出来た。

 とはいえ、説明するのも面倒。


「企業……?まぁ、でも、そうかぁ。秘密だよなぁ。今も、移動中でありながら魔導書を広げているわけだしな。それだけずっと研究しているような生活を送っていれば、すげぇ謎技術も生み出せるか。まぁ、あたしには無理だな。そんな勤勉になれそうにねぇな」


 馬車に乗っている僕は今、魔導書を広げながら魔法の研究を行っている。

 確かに、その様子を見れば、ボハテルが僕のことを勤勉な真面目ちゃんだと思うのも当然だろう。


「楽しいんだよ、これ」


 オタクの諸君ならわかってくれると思う。

 魔法へのあこがれを。

 そして、実際に僕は魔法が使える。

 これで、魔法に熱中するなという方が無理だ……後、やっぱりこのロイドの体は凄い。ありえないくらいに頭が回るし、ウソみたいに記憶力がある。これらを活かせば魔法の研究だって捗りまくる。

 だからこそ、楽しい。ここまで好き勝手に出来たら、もう楽しくて楽しく仕方ないっ!

 魔法の開発は大した娯楽もないこの異世界で最高の娯楽だった。


「あたしにはわからないな」


「そう?……新しい魔法を考えたりするの楽しいでしょ。今、僕はありとあらゆる五感を遮断する魔法を作ろうとしているんだよね。五感を失った人間ってどうなるんだろう?狂いそうじゃない?普通に。そこも気になるし……実際の魔法の威力としてもかなり強くない?」


「お、恐ろしい魔法だな……食らいたくないぜ」


「いや、この魔法の実験相手はボハテルだけど」


「はっはっは!冗談キツイぜ!冗談にならないレベルの魔法を私の方にぶつけないだろう?」


「……」


「う、ウソだよな……?」


「……」


「おいっ!?」


 僕はボハテルと楽しく、魔法の研究を行いながら王都を目指す馬車に揺られるのだった。

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