インターネットが使えなくなった

cloned

インターネットが使えなくなった。

あれからもう1年になる。

突然インターネットが使えなくなった。

最初はうちの家だけだと思った。

でも、テレビのニュースを見るとどうやら全国で発生しているらしい。

翌日、大学に行くとこの話題で持ちきりだった。

誰も繋がらない。

誰にも繋がらない。

そう。これがインターネットのない日々の始まりだった。


テレビはお正月くらいしか見たことがなかった。

インターネットが使えないので仕方なくテレビをつける。

連日、原因や復旧の話で騒がしい。

ネットワーク機器が全国で一斉に停止したらしい。

製品に仕組まれたテロという見方まである。

衛星を使うネットは政治的な理由で今は使えないらしい。


幸い、電話やショートメッセージは使えたから連絡は取れる。

とはいえ、日常は驚くほど不便になった。

僕は当時大学4年生で講義やゼミの予定を全て大学のサイトで確認していたから掲示板の張り紙を見るのは面倒だった。

今日の天気さえ決まった時間にテレビを見ないと分からない。


何より、SNSが使えなくなった。

隙間時間にいつも開くくらいにはヘビーユーザーだったから喪失感が大きい。

SNSは僕にとってもう一つの世界だ。

本名はもちろん年齢や性別、どこに住んでいるかも書いていない。

だから現実の自分とは完全に切り離されている。

好きな自分で居られるのは気分が良い。

とはいえ別の人格を演じたりするわけでもない。

ただただ思ったことを書いて思ったとおりに反応するだけだ。

それでも先入観のない世界は憩いだった。

だから大学の友人にそのアカウントは教えなかった。


インターネットが使えなくなって1ヶ月ほど経った。

日本中が動揺しているかのように見えた。

テレビが煽っていただけかもしれないけど本当にそんな気がした。

さすがにここまで長く復旧しないとは思わなかった。

世界中で起きているわけではなく日本だけが繋がらないらしい。

大規模な復旧計画が行われ、それで解決するかに思われたが復旧した直後にまた繋がらなくなった。

原因は不明のままだ。

こうも長く続くと、もうずっと繋がらないのではという気さえした。


幸い、大学には仲の良い友人がいて寂しい気持ちにはならなかった。

部活やサークルには入っていなかったけれど、帰り道に友人とビリヤードやダーツをすればあっという間に夜になる。

卒論も順調だったから時間の余裕もあったし日中は楽しく過ごせた。

けれど家に帰るとそうもいかなかった。

ひらけないと分かっているのにSNSアプリをタップしてしまう。

今日こそ繋がるんじゃないかと何度も試した。

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