【カクヨムコン10短編】そして青の女王は微笑んだ

肥前ロンズ

第1話

 私には好きなものが二つあるわ。

 一つは『青』。ドレスも宝石も、全部青。周りからは『青の女王』と言われていた。海の青も空の青も好きだけど、人が作り出す青はもっと好きよ。だって海も空も手に届かないものでしょう。私、自分のものにならないものは嫌いよ。失うのも嫌い。茜色になったり黒くなったりして、いつでも青いわけじゃないし。

 もう一つは『男』。特にいい男と寝るのが大好き。強くて、気前よくて、恐れを知らず、私の才能や他の男に嫉妬しない。私が「欲しい」と言えばなんでも叶える男。

 女は特に興味ないわ。いい男を捕まえると、妻だか婚約者だかが言いがかりをつけてきたから、二度とその気が起きないよう徹底的に踏み潰したけど、私の邪魔さえしなければどうでもよかった。

 なぜか「ほかの女の美貌や若さを妬む女王」なんて言われているけど、私、永遠の若さも美しさも持っているもの。ほかの女が持っている不完全な若さや美しさを妬むなんて、極上のワインを飲んでいるのにブショネになったワインをねだるようなものでしょ?

 美しいだけじゃない。お金も腕力も賢さもあった。そういうのを持っている男で埋め合わせようとするバカな女がいるようだけど、本当にバカだと思うわ。

 そう、あなたの言う通り、私にはなんでもあった。なのに私は、どうしてか気になったの。

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