第4話 鬼灯 シオン
「んお、もうこんな時間か。シオンが昼ご飯を作ってくれとるはずじゃから行くとするか。案内するから着いてきてくれ」
「りょーかい」
椿の後に続き部屋から出て恐らく食卓へと向かっていく。
「てかシオンさんって誰なん?メイドさん?」
「そうじゃそうじゃ。ここの雑務なんかを一手に引き受けてくれるとるんじゃぞ」
「そりゃ大助かりやね」
「うむ!」
◈
食卓の方へ着いたので並べられていた椅子に座りご飯を待つ。
「今日はご飯なにかのー」
「なんなんやろねぇ」
「蓮はなにか好きな食べ物とかあるかの」
「食えたらそれでええかな。贅沢言える生活しとらんかったし」
現実から逃げたすぎてスマホ手放せんかったから食生活が犠牲なってもてんなぁ。草。
「いっぱい食べような!これからな!」
「もう気にしてないしそんな元気づけようとせんでもええよ」
「そっ、そうは言ってもじゃなぁ……」
「おや、もう集まってるんですかお二人共」
そう話していると来る時に聞いたメイドさんの声が聞こえてくる。
「おーシオン!今日は何を作ってくれるんじゃー?」
「すき焼きでございますご主人様。そちらの新人さんがここに来た記念日ですし豪勢にいこうかと思いまして」
「おー最高じゃな!……蓮はすき焼き大丈夫じゃよな?アレルギーとか……」
「食ったことないけどアレルギーは無いから大丈夫だと思うわ」
いや食ったことはあるか?どうやろ……少なくとも中学生になってからは食ったことないしなぁ。まぁ食ったことない判定でええやろ。
「食べたことが……?なるほど、訳ありの方ですか。腕によりをかけて作るので楽しみにしていてくださいね」
「ありがとうございますメイドさん」
「シオン、とお呼びください新人さん。いえこの呼び方は適切ではありませんね。お名前を伺ってもよろしいでしょうか」
名前……名前か。
「僕は鬼灯蓮って言います。よろしくお願いしますシオンさん」
「蓮さんですね。よろしくお願いします。良い苗字ですね」
「えぇほんまに良い苗字やと思います僕も」
「そうじゃろうそうじゃろう!それじゃ儂も自己紹介するかの!」
「なんで?シオンさん普通に知っとるやろ椿のこと」
何で今更自己紹介するんや?
「儂はただの椿改め鬼灯椿!蓮の家族じゃ!」
「……椿はん?」
「なんじゃ蓮」
「嬉しいねんけどシオンさんぽかんとしちゃっとるから説明してあげてくれん?」
「……ほんまじゃな」
咄嗟やったけどシオンさんの方向いてくれてよかった。僕の今の顔はあんま人に見せられんやろしなぁ。
◈
「なるほど、そんな事が……ふむ。蓮さんは今年何歳になられますか?」
「んえ?26なりますけど」
「では私の事は姉だと思ってください」
「すんません頭のネジ何処やりました?」
急にどうしてもたん?ほんまに。落ち着こ?
「私って今年28になるんですよ」
「はい」
「つまり姉です」
「はい?」
「これからは姉として蓮と接していきますね」
「なんでなん?」
ちょっ椿助けてくれん?儂知ーらないみたいな顔せんでさ。口笛吹けてないで?
「私も家族と言うものに憧れがあったんですよ。鬼灯シオン……ふふ、良いですね」
「いい名前じゃろ?残りの2人にも早く教えてやらんとな!儂らは家族なんじゃから!」
「家族良いですね……ほら、蓮。私のことを一旦お姉ちゃんと呼んでください」
急に?
「この歳になってお姉ちゃんって呼ぶの恥ずかしいんですけど?んー……姉さんとかでええです?」
「ええ!ええ!姉さん。いい響きです!是非呼んでください!」
最初のクールな印象何処行っちゃったんやろか。いや別に本気で嫌がっとる訳ではないんやけどさ。仲良くしようとしてくれてんのは伝わってくるし、ただちょっと恥ずかしいだけで……。
あぁーあかんめっちゃキラキラした目で見てきとる。姉さんって呼ばな逃げられへん空気やん。1回言ったらその後はすっと言えるのかもしらんけど勇気出すのむずっ!
「……迷惑、でしたかね」
「いや恥ずかしいだけや!ごめん!姉さん!これから姉さんって呼ぶからそんな顔せんでくれ!」
残念がる顔があまりにも心に来てしまい恥ずかしさをかなぐりすてて姉さんと呼ぶ。普段やったらそんな事ないのになんでなんやろう。分からん。
「っ……!良い!良い響きですね!任せてください蓮!お姉ちゃん頑張りますよ!」
そう言って台所の方へ姉さんが全速力で向かっていく。
「仲良く出来そうで良かったの」
「それはまぁ……そうやね」
変な人ではあるけど話しやすいし僕のことを大事にしてくれそうやしな。変な人ではあるけども。
「他の2人にも姉呼びしろって言われたらどうするんじゃ?」
「じゃんけんで勝った人だけ姉呼びするわそれは」
「儂のことも呼んでくれていいんじゃぞ?そうじゃなぁ……ママーって」
「絶対嫌やわそんなん。きついやろこの歳にもなってママ呼び」
「そうか?別にいいと思うんじゃがな儂は」
「まぁ椿からしたら26は子供と変わんねぇか」
「そうじゃな」
その後も他愛のない話をしながらご飯が出来るのを2人で待った。
その話の間に一つだけ気になっていた質問を椿へと投げかけた。
椿は寿命ってどのくらいなん?……と。椿は笑って、儂は不老なんじゃ。不死でもある。と答えた。
その笑みには隠しきれないくらいの悲しみが宿っていて、僕はそれに対して何も言うことが出来んかった。
漫画やらアニメやらで不老不死のキャラが出る度に思う。物語が終わったあと、絶対に仲間と生き別れてしまうんだろうなと。それはどれほどの悲しみなんだろうかと。
椿は一体どれだけの死を目の当たりにして、どれだけの別れを経験したんやろうか。
「なんじゃ?蓮。急に黙りおって……気にしなくていいんじゃぞ?しょうがないことなんじゃから」
「僕は……」
「ん?」
「僕はどんな手を使ってでもあんたの隣を離れんからな」
僕のその言葉に椿は面を食らったような顔をして
「期待しとるぞ?」
と笑った。
まだ会ってから1日も経っていないし、椿について知らないことがいっぱいあるのにあんな事を言うのは傍から見れば重すぎるのかもしれへん。
それでも、それでも今日死ぬはずやった僕の人生を、惨めなまま終わってしまうはずやった僕の人生を椿は救ってくれたんや。
やったら死ぬその時まで僕は椿のために命を使う。誰にも邪魔はさせんわ。
────────────────────
初期構想だとこんな重い子じゃなかったんだけどなぁ……。
読みにくい所や表現が違う所があれば教えてください。
モチベに繋がるので感想や♡や星沢山ください。星100目指してます。
次の更新予定
糸目で関西弁の人生詰んだフリーターお兄さん。待遇の良さに釣られ秘密結社の一員になる 中田の刀な鷹 @Tanaka_kanata_takana
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