桃犬会談編
第18話 桃犬会談①
城の最上階、桃次郎の首が落ちた窓から、猿の大将 : 紫煌猿が首を出し、そして、
「キジへの発砲開始!」
と大声で叫びました。その叫びを聞いた瞬間、城を支配した猿たちがキジに向かい、一斉に銃の発砲を開始しました。それと同時に、城の外にいた残りの猿たちも、緊急用に持参していた銃を取り出し、キジを撃ち殺し始めました。
キジたちは仲間であったはずの猿たちの急襲に驚き、成すすべなく猿たちの銃の餌食となっていきました。中央で指揮していたキジの女王はキジの森への避難を指示しましたが、混乱状態の中で、その指示が通ることはかないませんでした。
キジの女王は全滅を覚悟していました。しかしそのとき、轟音のような低い唸り声が響き渡るのをキジたちは聞きました、何事かとキジたちは空に飛び立ち音の方向に目を向けると、巨大な化け物が桃太郎農園の城に向かってくる光景が飛び込んできました。その光景を目にして驚愕の表情を浮かべながら地上へ降り立ち、そして一言、キジの女王に震える声で告げました。
「鬼が…襲ってきます…」
キジの森の木々の中から、四メートルほどの巨大な体躯に、分厚い筋肉で包まれた緑色の上半身をむき出しにし、腰には雷模様の布を腰に巻き、右腕には身長と同等の棍棒を持ち、それを肩に担いだ鬼が3人現れました。これが私たちの知る『桃太郎』に出てくる最大の敵、鬼ヶ島の鬼です。そして、この鬼の存在は伝説として、桃太郎農園の民はもちろん、キジ、猿、犬、すべての生命が知っているのでした。
鬼とは、どの生物よりも強く、そして、どの生物よりも強欲であり、どの生物よりも無慈悲であり、この世界のあらゆる富を牛耳り、奪い、もとは満たされたこの地上に貧富を生み出したものとして、伝説の生き物として知られていました。
現れた鬼たちを見た猿たちも驚き、驚愕しました。鬼の風貌と威圧感は一目でこの伝説は嘘偽りではなく真実であるということを感じさせました。しかしながら、ここでひるんでいては鬼に殺されてしまうことも確かでした。一匹の果敢な猿が鬼に向かって叫び、銃を発砲しました。それが号令となり、猿たちが一斉に鬼に向かい銃を発砲しました。
しかし、鬼はびくともせず、どっしりと経ち続けました。銃の玉が切れ、銃声音が収まり、一瞬の静寂ののち、鬼たちは雄叫びを上げました。すると、この地上のあらゆる植物が桃太郎農園東の城に向かって絡みつきました。その締め付けはどんどんと強くなっていき、城はあっという間に砕け去り、その中にいた猿たちも皆殺しになりました。
城のあった場所には絡まり合った植物がまるで巨大樹のようにそびえたっていました。
「あぁ…」
と声にならない声を上げながら呆然と立ち尽くす猿には目もくれず、三人の鬼たちはその居大樹の周りに立ち、そしてひざまずき、祈り、それが終わると、もと来た方向に帰っていきました。
この合戦はそのあと、指揮系統を失った猿たちはばらばらに散りながら撤退を余儀なくされました。鬼に救われた形のキジたちもいったん戻ることとなりました。
桃太郎農園東、桃次郎及びおばあさんの陣営は兵のすべてを失い、生き残りは緊急地下通路で逃げたおばあさんとその側近のみとなりました。
一方そのころ、桃太郎農園西、桃太郎が作った緑壁の植物はすべて鬼の作った巨大樹に吸収され、緑壁は崩れ去りました。緑壁の中にいた桃太郎は裸のまま解放されました。この桃太郎の復活が、さらに波乱を巻き起こすのでした。
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