5.とれーにんぐ
この間ミーナちゃんに言われて初めて気づいたのだが、俺はまだハイハイもしていない。
まだ生後数ヶ月なのだから急ぐ必要はないのかもしれないが、こうして異世界に転生した以上、俺の
…あれ?2つとも俺できてなかったか?
言葉は人前で披露してないだけで使えるし、魔法も風に限れば自由自在だ。
…うん、一応どっちもできてるわ。でもやっぱり前世の小説の中の人達には全然届かないなー。自力で動いてないから実はまだ文字があまり読めなかったりする。この間やろうとして知識でじゃなくて物理的に頭が破裂しそうになったんだけどね。
まあそれに関してはここ2週間ほど風を使って自分で勉強し出したこともあり、随分と読めるようになった。絵本くらいならもう一人で読める。
こうして並べてみると俺も運動能力以外はそこそこチートだったんだと分かり、少しだけ安心した。
…もっとも、その運動能力が致命的に低いんだけどな。今どうしても歩けなきゃいけないなんてことはないんだけど、小説の中とはいえ他の転生者に負けたくはない。
風を使ってしまえば歩けなくてもどうにでもなるのだが、それをすると風の仙人みたいになってしまう。…なんかちょっと違うだろ?
一瞬楽でいいなと思ってしまった俺自身を頭の中で全力でビンタする。このまま身体鍛えへんかったらワイひょろっひょろなってまうわ!何故に関西弁。
とにかく、まずはハイハイからだ。やっぱり他の転生者にできることができないのは悔しいからな。
妙な対抗心を燃やす俺を見て、俺を抱いたミーナちゃんは首を傾げるのだった…。もうええわ‼︎
ーーということで、ハイハイの練習である。
風を使えばいきなり歩くこともできるがやめておいた。ハイハイの過程をすっ飛ばして突然二本足で歩き出す赤ん坊なんか俺だって嫌だ。とは言っても所詮ハイハイだからソッコーでできてしまった。
そこで嫌だと言っておきながら歩くことにした。…い、一応ハイハイはやったからな。
しかし俺は現実を知った。
これまで魔法を使う時にネタでいろんなアクションをしてきたから腕の力はそれなりにあるのだが、まだいいだろうと風に頼り切っていた足の力はほとんどついていなかった…。
中途半端な腕立ての姿勢のままバックに石でできた「がーん!」という文字が右に傾いて落ちてきそうなくらいショックを受けていた俺だが、ふと思いついてそのまま腕立て伏せをやってみる。
…もちろん風の力を借りてな?流石に0歳の身体で自力での腕立て伏せはムリだ。
当然俺が筋トレを始めたのには理由がある。
小説の知識でしかないが、スピードがあってもパワーがないと結構負けることが多い。
それに、今焦らなくても普通にしてれば歩けるようにはなるし、そもそも歩き始める前に筋トレを始める脳筋は見たことがない。ならもういっそのことパワーファイターになってやろうと思ったのである。
実際は風を使えば今も相当なスピードは出せるんだけどな。
そんな訳で俺はミーナちゃんが哺乳瓶片手に入ってくるまで黙々と腕立て伏せを続けた。
これ端から見たらすごいシュールだな…。
ミーナちゃんが来たときはハイハイに切り替えたからバレてないハズだ。
「ル、ルーシャス様、腕立て伏せしてませんでした?」
「うー?」
「きゃあ~可愛いーっ!」
バ、バレてないハズだ…。
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