4.かぜになったしょうねん
太陽の光が燦々と降り注ぎ、木の葉を微風が揺らす爽やかなある日…の次の日。
俺は昨日のミーナちゃんの魔法を思い出しながら練習にふけっていた。…というか魔法撃ちまくりだった。
何かイメージがあった方がいいだろうと思い、昨日木の葉を揺らしていた微風を意識したら、体の中で風が吹き始めた。試しにその風を右手に集めて放り投げてみると、結構な風が発射されて、ベッドがぐちゃぐちゃになり、俺自身もちょっと浮いていた。
…うん。すごいあっさりできた。ここまでは。
風のイメージだったから風が出たのかと思い、次は水をイメージしながら撃ってみたのだが何故か風が出る。その後、土やら光やらをイメージしてみても風が出る。やけになって火をイメージしても以下略。
はあ~何でだろう?風は出るんだ。風は出るんだけどそれ以外出ないんだ。なんか呪文みたいなのがいるのか?でもミーナちゃん普通に水出してたよな…。おかしいなー転生したらポンポン魔法が出せると思ってたのになー。
ああでもないこうでもないと葛藤し続けること体感時間にして1時間ー。
とうとう俺は開き直った。1時間葛藤して諦めるのかよ!ってツッコまれそうだが無理なんだもん!
この1時間某眼鏡の魔法学校生の呪文を叫んだり、ノリノリで「シャ○ドゥビタッチヘンシーン!」ってやったり何故かア○パンチを繰り出したりしてみたが、部屋に風が吹き荒れるだけだった。
逆にア○パンチで風が出たのは凄くないか?と思いつつ、俺は他の魔法をとりあえず諦めてこの風魔法を極めにいくことにした。
まずは春風をイメージして暖かい風を吹かせてみる。右手に魔力を流し、放出するとイメージ通りの風が吹いた。その後に冷風もやってみたがあっさりできた。
それからいろいろやってみたが、風でなら思い通りにいくようだ。
調子に乗った俺は風をイスの形にしてそこに座った。当然風に直接座るなんてことはできないので、俺が浮くぐらいの風を下から吹かせた。クマのぬいぐるみを相手に
「そこのお前、図が高い!」とかやって優越感に浸る。
しかしこの世界の魔法ってどういうものなんだろう。せめて本でも読みにいけたらなあ~。
ん?待てよ。もしかしてこのイスって動かせるんじゃないのか?魔法で飛んでいけたら別に歩けるようになるまで待たなくても自分で本を読みにいけるじゃありませんか!
素晴らしいことに気づいた俺は魔法のイスを動かしたーー。
「はーいルーシャス様、これで大丈夫ですよ~」
「うー…」
「まだハイハイもしてないのに、どうやってこんな大きなたんこぶ作ってきたんですかぁ~?」
何故俺がミーナちゃんに手当てを受けているのかというと…俺はあの時ちょっとエキサイトして魔力を思いっきり使ってイスを動かした。そしたら俺の魔力はなかなかに多かったみたいで、イスはもの凄いスピードで動き出した。
で、そのまま壁にどっかーん。…はい、調子乗り過ぎました。
たまたま親父もお袋も出かけてていなかったから大騒ぎにならずに済んだが、派手にぶつかったせいで俺の額には野球ボール大のたんこぶができてしまった。…で、今に至る。
真面目に痛かった…。素で泣きそうになったよ…。次からはちゃんと魔力制御して使おう。
額をさすりながら決意を固める俺を見て、ミーナちゃんは首を傾げるのだった。おいもうワザとだろ!
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