絶対無理と思っていた学園一の美少女と付き合い始めたら、何故か甘々な関係になりました
延野 正行
予鈴
しばらく毎日投降します。
よろしくお願いします。
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「好きです。つ、付き合って下さい」
夕焼け色に染まった誰もいない教室。
凜と女の子の声が響き渡る。
さっと秋の風が凪ぎ、穏やかにカーテンを揺らすと、黒髪を垂らした女の子の姿を隠れた。これは夢なのだと思ったのだけれど、やがて風は止み、同じ姿勢の女子高生がセピア色の光とともに再び現れる。
腰まで伸びた黒い髪。
抱きしめたくなるような絶妙な肩幅。
過小も過剰もない上品に膨らんだ柔らかな肢体。
学校指定の赤いタイをキュッと絞め、シックな黒のブレザーは彼女が着ると一流の仕立屋が制作したのではないかと思うほど、仰々しく見える。
彼女の名前は
学園一――いや、宇宙一美しいと称してもいい女子高生だ。
対してぼくはというとお世辞にも彼女に釣り合うほどの美男子ではない。
背丈はおそらく彼女より低いし、その割に体重は彼女よりも重いだろう。
額の辺りをツンと突こうものなら、コロンと気持ちのいい音を立てて、転がっていくはずだ。
曰わく「リトルオーク」。
曰わく「可愛い方のオーク」。
そんなぽっちゃり系男子のぼくに、宇宙一美しい少女である姫崎詩子が、頭を下げ、あまつさえ告白した。
当然信じられなかった。
何度、目を擦ったのかわからない。
おかげで目が痛い……。
しかし、非現実な光景に、ぼくは現実に連れ戻すことが起きた。
震えていたのだ。
ダヴィンチかミケランジェロが作った象牙細工のような美しい指が。
サクランボのように淡い唇が。
あらかじめいっておくと、ぼくは何もしていない。
恐喝、強請、脅迫なんて以ての外だ。
そもそも震えたいのはこっちの方だった。
彼女の震えは、おそらく根本的な恐怖。
今から紡がれるであろうぼくの告白の返事に、純粋に怯えているように見えた。
けれど、震えたいこっちも一緒だ。
『あなたの存在は重大な環境汚染ですね』
『ごめんなさい。カメムシと付き合う方がまだマシです』
『原始の時代の人ですか? 鏡の使い方お教えしましょうか?』
今の目の前にいるのは、数々の名文句を残し、男女問わず、辛辣な言葉を返して、勇気あるものを地獄に落としてきた【姫騎士】と名指しされる美少女。
一生付き合うことはない――この先、口も聞くこともないであろうと思っていた彼女が、ぼくに告白してきた。
一体、これはどういうことなんだ……?
……さてさて宴もたけなわではあるけれど、どうしてこうなったか説明しよう。
いや、大して深い事情はない――と思いたい。
むしろ数奇な事象はあるかもしれないけれど。
ぼくは普通の高校生だった。
そう。今日この時までは……。
これは間違いなく“普通”のどこにでもある学園ラブコメディ。
リトルオークと呼ばれるぼくと、『姫騎士』なんて少々物騒で可愛げのある綽名の姫崎詩子のお話である。
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