クイックルワイパーの妖精

一郎丸ゆう子

私は今、大掃除ができないほど忙しい人気作家です

 ああ、大掃除したくなあい。


 妄想の中の私は、マイクロファイバーの雑巾で窓をピカピカに磨いて、床にワックスをかけて、ガスレンジとレンジフードの汚れも落して、ピカピカになったおうちを眺めながら、よし、新しい年を迎える準備万端! ってガッツポーツをしているんだけど。


 目の前には絶望的な現実が・・・。


 だがら、妄想の中の私を現実にすべく立ち上がるぞという気合を廊下の寒さが奪っていく。


 そして、今、違う妄想の中に身を投じる。


 今、私はチャットGPTに指示されたチャットGPTの中の存在。


 貴方は人気の童話作家です。来春出版予定の童話集の追い込みで大掃除もする暇がないほど執筆作業に追われています。日本の主婦が大掃除をしなくてよくなるような童話のストーリーを作成してください。


 A.おまかせください。日本の主婦が大掃除をしなくてよくなるような童話のストーリーですね。



『クイックルワイパーの妖精』


 私はクイックルワイパーの妖精。なんかこの国の“奥さん”っていう人種は、この時期、目が回るくらい忙しいんだって。だからね、いつもこれで宇宙を綺麗にしている私が、今年はこの国で“奥さん”たちの代わりに国中をピカピカにしてあげることにしたの。


 そこは日本っていう国らしいので、まずは、地球をちっちゃくして、掌に乗せて、日本を探すよ。クイックルワイパーで地球をごしごしして、


「日本出てこい」


 って叫んだら、あっ、あったあった。黄金に光ってるね。ちょっとくすんじゃってるから。埃をはらいましょう。


「ふーっ」


 私の綺麗な息を強く吹きかけて、埃を払ったよ。これだけでだいぶ綺麗になったけど、今度は水拭きね。


 まあ、面倒だから上から如雨露で水かけちゃおう。うん、いい感じ。


 そしたら仕上げ、この金のクイックルワイパーでゴシゴシ。すごいすごい。どんどん輝いてきてる。


 国中ピカピカになったから、汚れないようにコーティングしといたよ。


 ついでだから、ほかの国もやっとこ。


「あっ」


 海にクイックルワイパー落しちゃった。


 しょうがない、海から綺麗にしていくか。



 いかがですか? 日本の主婦が大掃除をしなくてよくなるような童話のストーリーを作成しました。このお話を参考にして、まずは自分の身の回りから綺麗にしてみてください。



 あっ、やっぱり、現実の状況は変わらない。とりあえずテレビ台の埃を取ろう。







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クイックルワイパーの妖精 一郎丸ゆう子 @imanemui

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