第2話 神様ご降臨?

「…………どういう、こと……?」



 梅や椿が色とりどりに咲き誇る、広々とした雅な庭園――その中を流れる反射光の輝く池の前にて、透き通る水面に映る自身の姿に呆然と声を洩らす。だって、そこに映っているのは――


「……すっごい、綺麗」


 そう、ポツリと呟きを零す。……いや、これだけ聞くとただのナルシストでしかないけど。でも、そうではなく――と言うのも、水面ここに映るは私ではなく、得も言われぬほどに優雅な美人で。それこそ、本当の私と同じくらいの……うん、ごめんなさいだいぶ盛りました。


 ともあれ――彼の言っていた名前……あれは、どう考えても――



「――ほお、やっと気付いたようじゃな嬢ちゃん」


「…………へ?」


 卒然、何処からともなく届いた声に唖然とする私。だけど、辺りを見渡すも誰もいない。……えっと、気のせいだったの――


「――これこれ、どこを見ておる嬢ちゃん。ここじゃここ、こっちに顔を上げい」

「……えっと」


 すると、再度届いた声に驚き……いや、正直もうそんなに驚いてないけど……ともあれ、声が放たれたとおぼしき方向へ視線を向けると――


「……えっと、うん……やっぱ気のせいか」

「いや目ぇ合ったよねぇ!?」


 そう、ポツリ下した結論に何やらご不満の声が。……うん、気のせいじゃなかったみたい。……とは言え、私の反応も至極自然じゃないかと。だって――


「……えっと、貴方は……?」


 再び顔を上げ、躊躇いつつ問い掛ける。だって……なんか、雲の上にいるんだよ? そりゃ、目の錯覚と疑いたくもなる――


「――えぇ~、そんなに教えてほしいの〜? う〜んでもな〜、どうしよっかな〜。まあでもぉ? そこまで知りたいなら――」

「いえそうでもないので結構ですそれでは」

「ああ嘘ですごめんなさいわしは神様じゃ!」

「……はぁ……神様、ですか」


 なんかイラッときたので一言残し去ろうとするも、何やら慌てて引き留められ立ち止まる。

 ……神様、ねぇ。まあ、そう言われてすんなり信じられるかと言えばやはり難しいけど……でも、別に疑う理由もさしてないんだよね。それを言ったら、もう既に信じ難いことだらけなわけだし。


 それに、関係ないかもしれないけど……なんか、見た目とかちょっと神様っぽいし。何と言うか、七福神のどれかにちょっと似てる気もするし。……でも、どれだったかな……うん、どれでも良いか。ご想像にお任せします。


「――いやちゃんと描写せんかい!!」

「いや面倒くせぇなこの神様!!」




「……それで、今の私の状況はやっぱり七福神さんのせいなんですか?」

「いや七福神じゃないからね? それはお主が勝手に重ね合わせてるだけだからね? ――じゃが、察しが良いのう嬢ちゃん。まさしく、お主のその状況はわしによるものじゃ。神秘なる神のご加護を受けた、この神々しきわしの能力ちからに因るものじゃ」


 ともあれ、そう尋ねてみる。すると、何とも誇らしげに話す七福神さん。……いや、察しが良いも何も、この流れじゃそれしかないでしょ。あと、神のご加護受けてんだったら神様じゃないし。


 まあ、それはともあれ……結局、なんでそんな不可解なことを―― 



「――それはのう、嬢ちゃん。お主には、この世界――源氏物語の世界にて、ちょっくら筋書きを変えてほしいと思ったからじゃ」


「………………はい?」












 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る