第1話 母を助けに…?
それは僕が小学生二年生の頃のこと、今日のように梅雨の雨が降っていた夜のことだった。確か録画していたアニメや特撮ものを見終わった時だったはずだ。父が会社に出掛けていて母の仕事があって出掛けていた。でも、その日はいつもだったら8時までには母が帰ってくるはずなのに、いつまで経っても帰ってこなかった。僕は疑問に思い、携帯電話で連絡しても留守電しか返ってこなかった。母の身に何かあったのではと心配をし始めた。僕は咄嗟に思いついた。
「母ちゃんを助けに行こう!」
僕は先ほどのアニメや特撮の影響を受けていたのか真っ先に行動に移した。もう少し待つという選択肢はなかったのか。僕はいつもお気に入りに使っていたヒーローカバンを持ち、その中に二百円ちょっとの小遣いが入った財布を入れ、長靴を履いて傘を持って玄関に出た。両親には「雨の日は勝手に外に遊びに出ちゃダメ」「夜は一人で出掛けてはダメ」と言われていたが、「遊びじゃないし母ちゃんを助けに行くためだ」と変な理屈を考えて言われたことを無視した。僕は正義のヒーローだと自分自身に酔っていたのだ。そして家から出発した。
いつもだったら母の「いってらっしゃい」やご近所のおばさんの「気を付けてなさいよ」が聞こえていた。でも、今は雨が降っている夜だ。誰の話し声も聞こえない。傘を広げた時の音が大きく聞こえた気がした。雨が降っているだけの空間じゃ遮る音は雨だけだからだったのだろうか。それとも、雨音が空間を包み込んでいるからか。僕はちょっと驚いた。家から数メートル歩いたところで大きな水たまりががあった。明るい時よりも大きく見えるので僕は長靴で水たまりに入りはしゃいだ。怒る人がいないから思いっきりはしゃげるのだ。そのうち僕はしなくてはいけないことを思い出し、また歩き出す。
目的地である母の仕事場は以前車に乗ってきたことがあるだけなので、その記憶と勘だけで向かっていった。おまけに僕は迷わないとどこからか出た謎の自信を持っていた。
今思えばあまりにも無計画すぎた。
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