縁因-えんいんー

衿乃 光希

第1話 ことの起こり

 10月25日午後10時。


 公立高校のセキュリティに異常を告げるアラームが鳴り、二人の男性警備員が駆けつけた。


 学校は昼間の喧騒がなかったように静まり返り、街灯に照らされた校舎がぼんやりと浮かび上がっている。

 赤外線センサーの赤い点滅が、不気味さに拍車をかけていた。


 正門のセンサーを一時的に切ってから、開けて中に入ると、二人は別の方向に進んだ。


 一人は校舎の周り。


 一人はセンサーが点滅する校舎棟のドアを開けて中に入った。

 教室内にも立ち入り、確認していく。

 廊下の窓が一か所だけ、鍵が開いていた。


 突如、無線と繋がったイヤホンから相棒の声。


「中庭! 人が倒れています!」


 身をひるがえし、彼は大急ぎで中庭に駆けつけた。

 懐中電灯に照らされて、高校の制服姿の女性が仰向けに倒れているのが見えた。

 胸元が酷く濡れている。


「何があったんですか?」


 膝をつき問いかけたが、呼吸が荒く、返事は期待できそうにない。


 隣にもう一人倒れていた。

 その人物の胸には、ナイフの柄らしき物が突き立っていた。

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