記憶旅行記 〜キオクという猫〜

@tayumukioku

第1話

"「キオク」という猫"


空が低い。

一雨来そうな曇天模様。

うず高く積まれた金属片の山を

鉄色の猫が一匹

疾風の如く横切る。


鉄色のように見えたのは

体毛に辺りの工場から舞飛ぶ鉄粉が

夕暮の影のように

宿命的にはりついてしまい

周りの鉄片と同化しているためである。

元々の毛色は誰にも分からない。


そして、数時間先の未来のことも。


「キオク」


名を呼ばれ汚れた猫は

鳴き声も立てず静かに声の主に忍び寄った。


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