第51話 二年生です。
麗らかな春の陽が何とも心地好い、四月上旬のある朝のこと。
道中、公園に咲く満開の桜を眺めながら、ふとこの一年――とりわけ、
――パシンッ。
「――おっはよー、
【……お、おはようございます
「あはは、ごめんごめん。ちょっと勢い余っちゃって」
心地好い思考の最中、不意に背中に衝撃が走る。ゆっくり視線を向けると、そこには花も恥じらう可憐な笑顔を浮かべる美少女の姿が。軽く背中をさすっていると、少し可笑しそうに微笑む彼女。そして――
「――さて、今日から二年生だけど……これからも宜しくね、新里!」
――それから、数十分後。
「――あちゃー、やっぱり違ったか」
「……そう、ですね」
そう、軽く額に手を当て話す斎宮さん。違うとは、クラスのこと――昇降口の掲示板に張り出された、新クラスの振り分けのことで。……まあ、残念だけど仕方がない。確率的にも、一緒になれない方が高いわけだし……それに、今まで通り放課後やアルバイトでは会える……よね?
そういうわけで、三階――二年生のフロアまで来た後、それぞれのクラスへと赴く僕ら。斎宮さんはB組、僕はE組へと。
ところで、B組には
ともあれ、胸の高鳴りを抑えつつ教室の中へ。……大丈夫かな? 知り合いできるかな? できなかったら、また教室の隅でポツリ一人……いや、それでも良いか。そもそも、ここ半年くらいが例外だっただけで、基本ずっとそうだったんだし。
だけど、幸いそうはならなそうで。と言うのも――去年も同じクラスで、こんな僕にも時々話し掛けてくれていた女子生徒、
それから、数十分後。
朝のホームルームを終え、体育館――ほどなく行われる、入学式の会場へと移動する。
ところで、珍しいことに当校では在校生も基本、入学式に参加することになっていて……いや、珍しくもないのかな? 単に、僕が知らないだけで。
ともあれ、体育館へと集合――昨年同様、立錐の余地もないほど人がいて。……いや、流石にそれは言い過ぎかな? まあ、それはともあれ――
「…………あ」
所定の位置へと向かう
ともあれ、ほどなく全校生徒が所定の位置へ。それから、式は恙無く進み――
「――新入生、代表挨拶」
そんなアナウンスに、どうしてか少し恥ずかしくなる僕。……いや、どうしてかも何も、去年みっともなく辞退したからなんだけど。仮に、それが今年――そして、きっと来年であっても同様に辞退したことだろう。なので、これほどの数の人達を前に壇上に立とうと思えるだけでも、僕からすれば本当に凄く頭が下が――
「…………へ?」
「――いやー、やっぱり疲れるねえ。入学式って」
【ははっ、そうですね斎宮さん】
「……でも、私達も去年、こうして高校生になったんだと思うと感慨もあったり」
【……そうですね。僕も、そう思います】
その日の、昼下がりのこと。
穏やかな陽光が射す空き教室にて、和やかな
あの後――新入生のあいさつの後も、式は滞りなく進み閉会。その後、再びのホームルームを終え例のごとくこちらに移動してきたわけで……うん、いらないよねこの説明。
ともあれ、他愛もない話に花を咲かせたり将棋を指したりとまったりした時間を過ごす僕ら。改めて言うことでもないけど、斎宮さんとの時間はすごく楽しい。ほんと、こんな時間がずっと続――
「――ところで、新里。今日、新入生代表として挨拶してた子……すっごく、可愛かったね?」
「…………へっ?」
卒然、そんな言葉が届きポカンとする僕。いや、確かに可愛いけど……でも、どうして急に……いや、それよりも――
「――ほんと、すっごく可愛かったよねぇ〜。だって新里、ずぅ〜っと熱心にあの子のこと見てたもんねぇ〜」
「……えっと、その……」
……うん、視線が痛い。それこそ、さっきまでの和やかな雰囲気が嘘のように。……いや、ちょっとだけ気付いてましたよ? なんか、遠くから馴染みのある視線を感じるなぁと。でも、じっと見てたのは
「――すみません、失礼致します」
「「…………へっ?」」
ふと、声が重なる僕ら。突然届いた声の方――いつの間にか開いていた扉の方へ視線を向けると、そこには長い黒髪を纏う生徒――たった今、まさしく話題になっていた清麗な少女の姿が。卒然の思い掛けない展開に唖然とする僕らを他所に、彼女は再び口を開いて――
「――突然のご無礼、どうぞお許しください。先ほど壇上にて申し上げましたが、今一度――この度、当校に入学しました
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