第43話 再びのご登場?
「さて、
【……あっ、申し訳ありません! 折角の休憩時間だったのに、あまり休まらなかったのでは……】
「ううん。むしろ、新里と話せてリフレッシュ出来たくらいだよ。お陰で、ここからの仕事も頑張れそう」
【……でしたら、良いのですが……】
その後、再び腰を下ろし暫し他愛もない話に花を咲かせていた
まあ、それはそれとして……彼女はああ言ってくれたものの、やっぱり申し訳ないなぁ。休憩時間ほぼ丸々僕と話していたわけだし、きっとほとんど休めてないよね。考えても無駄かもしれないけど……僕に、何か出来ることとか――
「……あの、
卒然、お言葉の通り困ったような表情で話す斎服の女性。彼女は
「……その、14時から出勤してくれることになってた子から、突然キャンセルが入っちゃって、それで……」
「……そう、なんですね……」
そう、申し訳なさそうに話す天船さん。……だけど、話を聞いている限り彼女に責任があるとは思えない。突然のキャンセルなんて、彼女にだってどうすることも出来ないわけだし。
ともあれ……天船さんの言うように、これは大変困った事態だ。出勤してくれる子、というのは恐らく斎宮さんと一緒に巫女さんを務めてもらう予定の子だったのだろう。その人が来ないとなると、きっと斎宮さん一人でお客さんの対応をすることになる。恐らくは、ここからも大変忙しくなるであろう中、たった一人で――
「――そういうことなら、心配ないですよ美夜さん!」
「「……へ?」」
そう、明るく答える斎宮さんに思い掛けず声が重なる天船さんと僕。そして、何となく気恥ずかしくなり互いに軽く一礼する。……まあ、それはともかく……心配ないとは、いったいどういうことだろう? 天船さんに心配を掛けないため、努めて明るく振る舞って……いや、斎宮さんの表情を見る限り、そういうわけでもなさそうだ。だとしたら、彼女にはなにか秘策でも――
「…………ん?」
そんな思考の
「――さあ、出番だよあさいーちゃん!」
「あさいーちゃんそんなマルチじゃありませんよ!?」
【……それにしても、本当に良いのでしょうか。女性でない僕が巫女さんを務めるなど、果たして神様がお許しになるかどうか……】
「まあ、それは大丈夫でしょ。だって、困ってる人を助けてくれるのが神様でしょ? だったら、今まさに困ってる人を助けてくれる新里を許さないわけないし」
それから、数十分後。
不安と緊張で震え上がりそうな僕に、なんともからっとした笑顔で答える斎宮さん。そんな僕らがいるのは、天船さんの家の大きな居間の中――まさしく、これぞ和といった具合の大変趣のある空間で……まあ、今はそれどころでなく。
ところで、斎宮さんの勤務再開時間である14時はとうに回っているのだけど、事情が事情なので授与所は一時閉業――具体的には、巫女さんとしてのお作法を一通り僕に教え込むための時間を確保するためだ。……まあ、正直それ以前の問題だとは思うのだけども。
……そもそも、よく天船さんから許可が出たものだと未だに思う。
『――えっ、代わりに新里くんが出てくれるの? ありがとう、すっごく助かるわ! それに、貴方ならすっごく似合うと思うし!』
……うん、しかも結構ノリノリだったし。まあ、状況が状況だし猫の手も借りたい心境なのだろう。
ともあれ、やると決まったからには全力でお役に立たねば。推薦してくれた斎宮さんのお顔を汚すわけにもいかないし。……まあ、元より僕の希望ではないんだけども。
……ところで、それはそれとして。
「……あのさ、新里。我慢しなくていいから、今からでも行ってきたら?」
そう、気遣わしげに声を掛けてくれる斎宮さん。どこかそわそわしている僕の様子を気に掛けてくれているのだろう。もちろん、そのお気持ちは大変ありがたいのだけど――
【……いえ、それはなりません。巫女さんはお手洗いに行かないのです】
「アイドルかよ」
【……ところで、随分と今更ではあるのですが……本当に、バレないでしょうか?】
「大丈夫大丈夫。それに、万が一バレそうになってもあたしがフォローするし、何よりすっごく可愛いから自信持って、あさいーちゃん!」
【……どうしてでしょう。励まして頂いているのに、どうにも複雑な心境なのですが……】
授与所へいざ出陣という間近、もう幾度目かの不安を洩らすと、やはり快活な笑顔で答えてくれる斎宮さん。もちろん彼女を疑いたいわけなどないのだけど、それでも不安は消えてくれないし……それに、全くバレないならそれはそれで少し複雑な気もしてきたりして。
あっ、ちなみにお手洗いには行ってきました。まあ、アイドルだって本当はお手洗いくらい行くだろうし仕方ないよね! ……うん、ごめんなさい。
さて、さっそくですが顚末を申しますと――大変忙しくはありましたが、とりわけ疑われる気配もなく無事任務を果たせました。……うん、やっぱりちょっと複雑。
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