第39話 不敵な少女
「…………え?」
ふと、今度は左から大変お馴染みの声が届く。だけど、それは平時の柔らかな声音とは違っていて――
「……あの、
そう、おずおずと尋ねてみる。何故なら――その
「さっきココアって言ったけど、やっぱりコーンポタージュにしよっかなって思って。でも、そんなことより――」
チラとこちらへ視線を移し、僕の問いに答える斎宮さん。……うん、僕が聞きたかったのは今ここに来た理由じゃないんだけど……まあ、ちゃんと尋ねなかった僕が悪いよね。
――ただ、それはそれとして。
「――なんでここにいるの?
そう、改めて福原さんへと視線を向け問い掛ける斎宮さん。そして、先ほど同様やはりその
「なんでって……ここに来る理由なんて、歌う以外にあんまりないと思うけど? そもそも、
「……うん、それはそうだね。ごめんなさい。じゃあ、聞き方を変えるけど――いったい、
「……あ、あの……」
すると、斎宮さんの問いに何処か余裕の窺える笑みで答える福原さん。一方、斎宮さんは敵意の籠もった瞳のままで再び問い掛ける。……えっと、こんなに仲悪かったかな? この二人。
「別に、何の用ってわけでもないよ? ただ、昔の友達に偶然会ったから声を掛けただけ。何処か可笑しなとこでもある?」
「……友達なんて、良くも抜け抜けと言えるよね。貴女のせいで、新里は……いや、何でもない」
すると、何処か不敵な笑みで尋ねる福原さんに対し、明瞭に怒気の孕んだ声音で答える斎宮さん。だけど、この言葉は最後まで到達することなく彼女自ら
それでも、彼女の言わんとしたことは差し支えなく伝わったようで、福原さんは不敵な笑みを絶やさぬまま言葉を紡ぐ。
「……ああ、ひょっとして――妬いてるんだ? まあ、それも仕方ないか。だって――夏乃ちゃんのだ~いすきな男の子の、初恋の女の子だもんね。私は」
「……ちょっと、熱くなりすぎたかな」
めっきり寒くなってきた、12月上旬の宵の頃。
リビングにて、長机にだらりと身体を預けボソリと呟くあたし。何の話かと言うと、今日のカラオケでの件――思い掛けぬ再会を果たしてしまった、かつてのクラスメイトとの件についてで。
ところで、あの後の展開なんだけど……当然と言うべきか、歌を楽しむような雰囲気でもなくなり、利用時間を半分ほど残したまま退出――そして、そのまま解散となった。
【……あの、斎宮さん。先ほど、福原さんが仰っていたことに関してですが……その、あれは彼女のご冗談だと重々承知していますので、どうかご心配なさらないで頂けたらと……】
福原さんとのやり取りを終え二人になった後、おずおずといった様子でそう伝えた彼。彼の言う冗談とは、あの発言の中の『あたしが大好きな男の子』という部分のことで間違いないだろう。……まあ、正確にはだ~いすきなどと大層ふざけた調子で宣っていたけど、そんな些末はどうでもいい。そんなことより――
『ああ、ひょっとして――妬いてるんだ?』
あんな見え透いた安っぽい挑発が、どうしてかズキリと胸を刺す。……まあ、理由なんてほんとは分かってるけど。
――彼女の言葉が、紛れもなく真実だったから。
――とは言え、あくまで過去の話。あれからもう幾年も経過している
……ところで、それはそれとして――
「……やっぱり、覚えててくれたんだ……
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