[童話]ボールを探して[長編]

ヘンなやつ

第1話

 とんでいった。

 まさしく、弧をえがくように。

「アっ……!」

 とんでいってしまった。

 あたかも、はてしなく。

 ボールは、とんでいってしまったのだ。

「オイ! どこ蹴ってんだよ」

「つうか、どこまでいくんだ? ……あのボール」

「空に、すいこまれるようだぜ?」

 学校の休み時間だった。

 ぼくたちは、遊んでいたのだ。

 ……ボールを、蹴って。

「おまえ、とりにいけよ!」

「……わかってるよ」

「だけどよ、どこまでいくんだ? あのボール」

 ドンドンドンドン、とおくなってゆく。

「このまま、地のはてまでいくんじゃないだろうな?」

 とおくとんでゆき、みえなくなったボールを、追いかけて。

 ぼくたちは、走った。

 ……学校の、外にまで。

「オイ! まだいくのか?」

「みつからないんだよ!」

「ホントどこいったんだ?」

 ココロなしか、寒くなってきたようだ。

「オイ! もう、あきらめようぜ?」

「ここまできて、かえるのかよ?」

「チョット待って! あのヒトはダレ?」

 それを指さして、ぼくはいった。

「……? なんだ? ありゃあ」

「あいつ、ダレだ?」

 そこに、かれはいたのだ。

 むこうをむいていた。

 なるがため、ぼくたちに視線は合わせてきては、いない。

 ……だけれども。

「はじめて……、みた」

 ぼくは、思わずつぶやいた。

「おれも……、はじめてみた」

「ホントに、いたのか」

 みんなクチグチに、同じことをいう。

 ……驚いた。

「トランプ兵だなんて!」

 そう、それはトランプの兵士だったのだ。

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[童話]ボールを探して[長編] ヘンなやつ @sunguorrung01

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