僕と先輩のイケナイ試験勉強
ケロ王
第1話
僕はいつものように放課後、実験室に行き、そこで頭を抱えながら机に突っ伏していた。
「どうしたんだい? 心くん」
僕の様子を心配してくれたのか、実験室の主である
「あ、先輩……。実は、今度の期末試験の勉強がはかどっていなくて……」
「ああ、それはいけないな。心くんの成績が悪いと、私の実験のせいにされかねないからね。私がいくら理事長の娘であっても、そういった不正は難しいのだよ」
「ですよね。まあ、期待はしていないです」
僕の通っている黒井学園高等部は彼女の父親が理事長を務めている。彼女は理事長の娘。いわゆる、お嬢様だ。その権力を利用して、彼女は学園に『実験室』という名の彼女の私室を用意しているのだ。
彼女いわく、彼女の提唱している『恋愛性理論』はかなり有名らしい。(僕は知らなかったけど)
好感度の上昇はエッチな度合いと時間の二乗に比例するという数式らしい。それを実証するために、僕と先輩は放課後、様々な実験を行っていた。
今日も実験をするのかと思っていたけど、僕の言葉を聞いた先輩は難しい顔をして考え込んでいた。
「ふむ、ならば、今日から試験期間までは毎日勉強会だ!」
「えっ? でも先輩の勉強はどうするんですか?」
「私はこれでも成績はトップクラスなのだよ。普段の予習復習だけで十分な点は取れる。それよりも、心くんが成績が悪くて助手を続けられなくなる方が問題だ!」
普段の先輩があまりに変態なので忘れていたけど、彼女は容姿端麗、品行方正、成績優秀と非の打ちどころのない外面を被っている。だけど、今は僕の試験の方が問題なので先輩の提案はとてもありがたいのだが……。
「そう言っていただけるのは嬉しいのですが、僕は一人で何とか頑張ってみますよ」
僕の成績のために先輩を振り回すのは悪い気がしたので断ろうとした。しかし、彼女は僕に左の手のひらを向け、右手でこめかみを押さえる。
「いかん、いかんよ。私の理論から言えば、勉強も恋愛も一人よりは二人の方が効果が高い。心くんは私と一緒に勉強した方が結果的にプラスとなるだろう」
「そ、そうなんですか?」
「もちろんだ、勉強と恋愛は一見遠いようで、自己研鑽という意味では非常に近いものがある。心くんも『恋愛性理論』は知っているな?」
彼女の視線がひときわ鋭くなる。これは僕のことを試している眼だ。
「もちろんでしゅ!」
「……ふむ、さすがは心くんだな。だが、あれの応用範囲は広い。アインシュタインの相対性理論がニュートン力学にも応用できるようにね」
彼女の真剣なまなざし、そして重々しく語られる言葉。それらはまるで僕の覚悟を問うているかのような圧を感じるものだった。思わず、ゴクリと固唾を呑む。
「恋愛性理論も勉強力学に応用できるのだよ!」
「勉強力学……? 初めて聞きましたが」
「やれやれ、これについても説明が必要だとは思わなかったよ。まあいい、一から私が説明してあげよう」
そう言うと、彼女は席を立ってホワイトボードを僕の前に持ってきた。
「まず、勉強の成績には成績加速度Gがかかるんだ。何も勉強をしなければ、どんどん成績が下がっていく。しかも、加速度的に。だが、ここで勉強をしたとしよう。すると、成績を上げる方向に力が働く。これによって成績が下降することを防げると言うわけだ」
「先輩、勉強しても成績が下がるんですけど……」
「簡単な話だ。成績を上げる力が足りないからなのだよ。そして、それを決定するのが、『恋愛性理論』の公式になるのだ」
「な、なんだって?!」
驚きである。恋愛にしか関係しないと思われた『恋愛性理論』が勉強にも応用できるなんて……。これは世紀の大発見じゃないだろうか?
「これが勉強力学に応用した『恋愛性理論』の公式だ」
「……ほとんど一緒じゃないですか!」
左辺の名前が違うだけだった。そもそも、勉強の効果にエッチ度がどう関係するのか分からないんだが……。
「ふふふ、良く分からない、と顔に書いてあるぞ」
「ええ、全く分からないんですけど……。特にエッチ度って、どういうことなんですか!」
「これが、私と心くんが二人で勉強するほうが効率がいい根拠なのだよ。一人でエッチするより、二人でエッチしたほうが効果が高いだろう?」
「……!」
先輩の言葉の説得力に、僕は圧倒されっぱなしだ。これまで実験と称して先輩といろいろやってきたけど、確かに一人でするよりも二人でする方が効果が実感できていた。『何が』までは詳しくは言わないけど、そこは察して欲しい。
「どうやら、心くんも理解できたようだね。それじゃあ、さっそく二人で勉強を開始しようじゃないか。まずは一番苦手な教科書を出したまえ」
先輩の指示に従って、僕は世界史の教科書を取り出して、試験範囲を見てもらう。
「ふむふむ、なるほど。範囲は中世の西洋史といったところか。それじゃあ、そこに座ってくれたまえ」
先輩の指示に従って席に座ると、先輩も隣の席に座る。マンツーマンで勉強を教えてくれるようだ。
だが、次の瞬間、僕の耳に暖かい吐息と共に先輩のささやき声が聞こえてきた。
「1337年、フランスとイギリスの百年戦争だ」
「うひゃぁ!」
耳がくすぐったくて、思わず叫び声を上げながら飛び上がってしまった。
「心くん、マジメにやってくれたまえ」
「いや、でも……」
「こうやって耳元でささやかれるとエッチな気分になるだろう? それによって内容を記憶しておくことができるのだよ」
「……わかりました」
耳元で先輩が覚える内容を端的にささやいてくる。そのくすぐったいような気持ちいいような感覚に翻弄されていた。思わず、声が漏れてしまう。
「以上かな」
「んんああん……はあはあ、ありがとうございました!」
「次は数学にしようか」
「あ、はい。でも時間が……」
時間を理由に切り上げようとする。だが本当は、僕の身体が変な感じになっていて、これ以上耐えらえれない、というのが理由だった。
「それじゃあ、少しだけやって終わりにしようか」
「わかりました」
「それじゃあ、その問題集を解いていきたまえ」
どうやら、今度は普通に勉強するようだ――と思ったら、先輩が僕の左手を取ると、自分のおっぱいに持っていった。
「せ、先輩ぃ……。何をやってるんですか?」
「心くん、感覚に意識を集中するのだ。このおっぱいの柔らかさと、そこから導き出されるエッチな気分を覚えながら問題を解いていくんだ」
ぱっと見、大きく見えない先輩のおっぱい。だけど、触ってみるとマシュマロのような柔らかさだった。
そんな背徳的な行為をしながら、先輩の指示に従って問題を解いていく。
「はあはあ、よし、全部解けたね」
「はあはあ、あ、ありがとうございました。先輩」
いまだに手に柔らかい感触が残っている。先輩の顔も、うっすらと上気していて、エッチな気分になっているのが見て取れた。
「それじゃあ、今日はここまでにしよう。帰ったら、さっきの感覚を思い出しながら復習をしておくように」
「はい」
「それじゃあ、心くん。帰ろうか」
この日の勉強はこうしてひと段落ついた。翌日から、僕は先輩とエッチな試験勉強の日々を送ることになった。ある時はおっぱいの間に頭を挟まれながら、問題集を解いたり、キスをしながらヒアリングの勉強をしたりした。
そして迎えた期末試験。僕はスラスラと問題を解いていく。試験勉強での先輩によって与えられた感覚に関連付けられた記憶だ。問題は、思い出すたびに感覚が蘇ってきて、試験中にもかかわらずエッチな気分になってしまうことだった。
「先輩、見てください! 僕、やりました!」
試験が終わり、帰ってきた答案を手に実験室に駆けこんだ。結果はクラスでも上位に付けるほどの大健闘。その喜びを分かち合おうと、先輩の元に駆け寄った。
「ふふふ、既に結果は聞いているよ。さすがじゃないか」
「はい、これも先輩の『恋愛性理論』のおかげです!」
「それじゃあ、お祝いも兼ねてガストで食事でもして帰ろうか」
「はいっ!」
その後、僕たちはガストで軽いお祝いみたいな食事をして家に帰った。
僕のクラスでも、急に成績が上がったことで秘訣を教えて、と言われることもあった。
だけど、僕が『恋愛性理論』のおかげ、と言っても誰も理解できなかった。そのうち、僕の成績の秘訣を聞こうとする人は誰もいなくなった。
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この作品は「僕と先輩のイケナイ実験室」のサイドストーリーになっております。
良かったら、本作の方も見ていただけますと幸いです。
僕と先輩のイケナイ試験勉強 ケロ王 @naonaox1126
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