第8話 あーこれ誘ってるわ!

「ふわぁー」

腑抜けた声で体を伸ばす幸村。


「大丈夫ですか?眠たそうだけど…」

と、玲奈が聞く。


「全然大丈夫だよ…

 昨日ほとんど寝つきが悪くてね…」

(全部お前らのせいだけどな!)

と、心の中で思うも言えるはずがない幸村。


「1時間目理科室だし、行こ!」

美咲が元気よく3人に言う。


「そーだな」

と、いい幸村が用意を持って外のドアを出ると

右から影が…


(あ、これまたラブコメ的展開きましたか?)

幸村はぶつかる直前のわずがな時間で考えた。


バンッ!


「いたたた

 大丈夫ですか?」

と、幸村が目を開けると

そこにはモデルかと思う美少女が居た。


「ゆきむらっち何座ってんの〜

 え、えええ

 この子があの、天ヶ瀬朱里だよ!!!」

美咲は天使に会えたように言った。


「そうですけどなにか」

朱里は冷たく返す。


すると、幸村が立ち上がり近寄る。

「怪我ないですか?

 立ち上がれますか?」


「んっ…」

朱里が謎の声を出す。

その時朱里の顔が赤くなった気がする…


「どうして優しくするのですか?

 私は誰とも塩対応と知ってるはずですが

 構う意味がありますか?」

朱里がそういう。


「優しくするのに理由って要る?」

(決まったー!

 ここでバレーボールを

 しそうなセリフを入れていく!)

幸村は、そういう時だけ頭の回転が早いようだ。


すると、幸村が差し伸べた手を朱里は取る。

「名前はなんと言うんですか?」

朱里が聞く。


「俺の名前は椿幸村!よろしくな!」


すると、朱里が耳元に近づき

「もし良かったら昼休み、屋上来てください…」

と言う。


(あーこれ誘ってますか?)

と、幸村は思った。


「ではまた。ゆきむらさん」

朱里がそういい、その場から立ち去る。


「ゆきくーん?

 今何女の子とイチャイチャしてたの?」

「ゆきむらくん?

 私以外の子とイチャイチャしちゃだめでしょ?」

桃華と玲奈が同時に言った。


「あのー同時に喋られても…」

「反省していないようですね…」

どうやら幸村は反省していないらしい。


「フンッ!」

2人はそっぽ向いてしまった。


春休みになって幸村は

「トイレ行ってくるね」

といい、抜け出し屋上に行った。


屋上の扉を開けるとそこには朱里の姿があった。


「あ、きたきた。

 たまたま、男女比率で女の子に囲まれて

 勘違いしちゃってる勘違い男さんが」

「え?」

さっきの朱里とは別人みたいだ。


「どう?今度ドラマのオーディション受けるんです。

 演技上手いと思いますか?」

(あ、演技… それにしては結構本格的…)

「めっちゃ上手いと思うよ!」


「もっと褒めなさいよ…」

(あ、これラブコメによく居るツンデレタイプ?)

「褒めるって?」

幸村がそう言うと、


「あんたの素人意見なんかどうでもいいんだから…」

(え?俺にどう?って聞いてきたのそっちじゃ…)

「なんか、ごめん」

幸村が謝る。


「別に?謝罪なんて求めてないし?」

といい、幸村に近づく。

幸村と朱里の顔の距離が定規一個分ぐらいになる。


「あんたなんか気になっちゃったから、

 ここに呼び出したんじゃないし?」

(なんで、ここってめんどくさいやつしか

 いないの?)

幸村は心でそう思いながら、


「朱里さんって、モデルさんなんでしょ?

 朱里さん美人で可愛いし、写真集でも見たいな」

とりあえず幸村は褒めることにした。


急に顔が真っ赤になった朱里は、

逃げ出してしまった。


「ちょちょっと、何処行くの?」

結局よくわからないツンデレ(?)

みたいな感じで終わってしまった。


次の日登校すると、

(あれ、引き出しにもの入らないな…)

と、引き出しから物を出してみると…


「なんじゃこりゃ!」

中には大量の朱里の写真集だった。


それを見た、玲奈は

「やっぱり浮気ですか?ゆきむらくんさいてー」

といい、またそっぽ向いてしまった。


「なんか手紙みたいなあるよ?」

と美咲が明らかにラブレターらしき物を手に取る。


「美咲、いっかい待とう。

 それは俺が預かる。」

「あっそう?じゃあはい!」

すんなり渡してくれる美咲だった。


すると教室に朱里が現れた。

トコトコとこっちに向かってくる。


「別にあんたに読んでほしいわけじゃないけど

 あんたが読みたいっていうから、特別

 事務所に言って、全部貰ってきたわよ…」

(やっぱりこいつツンデレだ…)

「あ、ありがと…」

幸村がそういうと、


「なによ、その適当な返し、

 もう知らないんだから!」

といい、朱里はどこかに行ってしまった。


「なにあれ、典型的なツンデレね…」

美咲が言うと、


「どうして、天ヶ崎さんと仲良いのかな?」

と、幸村を肩をポンとして言う。


幸村が恐る恐る後ろをみると、

そこには、桃華がいた。


「これは違くて…」

「違うことないでしょ!」

「はい…」

桃華もそっぽ向いてしまった。


俺のごく普通な青春ライフは来る日があるんだろうか

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