⑬
連続的に質問を投げかけていくうちに、とんでもない事実に辿り着いてしまった…。
「先に自己紹介をしておくべきだったわね。私は、スパイス・アンリサイド。社長のセシリア・アンリサイドは私の母よ。スピカって呼ばれることが多いから、あなたもそう呼んでね」
社長令嬢であったことに加え、なぜスピカなのかと困惑したが、おそらく『spice』の最後の『e』をアンリサイドの『a』に変えて、スピカと読ませているのかもしれない。そういうことにしておこう。自分の中で納得がいったところで、こちらも名乗る。
「俺は、桐堂春希です。呼び方はお任せします」
「そっか。よろしくね、春希」
いきなり、愛称で呼ばせて、こちらも下の名前で呼ばれるとは…、さすがアメリカ人ということなのだろうか。
「あと、敬語じゃなくていいわよ。私たちたぶん、歳同じだから。私は、二十。あなたは?」
「俺も二十です」
なんで、わかったのだろうか。今だけは、ゾンビよりもこの人の方が怖い…。俺は咳払いで、柔らかくなった雰囲気を正す。
「話を戻すけど、あの船がこの島を目指していたことが事実なら、スピカはあの事故をどう見ているんだ?スピカの来るべくして来たっていう言葉を信じたとしても、この島に連れてきたかったのなら、船でこの島まで運んだ方が確実だよな?」
「確かに、そうかも。だったら、やっぱり偶然なのかしら…」
スピカも唸りだし、思考が行き詰まり始めた頃、やはり気になるのはあれだろう。
「ここで悩んでいても、答えは出ないようね。私は、なにかヒントがあるとしたら、あそこなんじゃないかと思っているわ」
「奇遇だな。俺もそう思っていたところだ」
スピカの言うことが正しいと仮定するなら、あの船がこの島を目指していたという部分が、この館の重要性を高めている。
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