あのね
しんのすけ
第1話
目覚めて一番に思うことは、今日も私は昨日までの私と同じであるということ。
試すよりも先に感じる“今日も出ない”。
そんな通常運転な自分に特に驚くこともなくベッドから出た私は、少し乱れた布団を軽く直すとすぐに制服に着替えて自室を出た。
天気はどうやら今日も晴れらしい。
あらゆるところに差し込む強い日差しに、寝起き早々少し頭がクラクラした。
だけどこの家中から感じる木の匂いと畳の匂いは大好きだ。
それは十七年この家で朝を迎えておいて毎朝それを実感するほどに。
台所に立つお姉ちゃんに朝の挨拶を済ませると、私は居間にすでに用意されていた朝食をとるべくそこに腰を下ろしテレビの電源を入れた。
朝のニュース番組ではちょうど天気予報が流れていた。
直後、この居間のすぐ隣にある廊下からトン、トン、と足音が聞こえた。
「あ、ゲンちゃんおはよう」
「…はよ」
「朝ごはんは?」
「いい」
「今日も食べないの?」
「んん」
「えー、煙草辞めてからすぐお腹空くようになったって言ってたからご飯いっぱい炊いたのに。見てこれ。三合」
「昼でもそんな食えねぇって…」
二人の会話を聞きながら、私は用意されていた味噌汁を静かに啜った。
『今日は一日を通して暑くなるところが多いでしょう』
そんなことは外を見れば分かる。
「でも高校の時はあんなにいっぱい食べてたのに…歳かな?」
「まだお前と同じ二十一だっつうの。味噌汁とコーヒーだけちょうだい」
「変な組み合わせ~」
「いいから」
「アイス?」
「ホット」
「こんなに暑いのに!」
「だからいいんだって」
朝でこれだけ暑いのだから、昼間の外仕事は大変だろうなぁ…
「おはよ~」
台所からこちらにやってきたゲンちゃんは、そう言いながら私の左隣に腰を下ろした。
熱中症対策とか…水分補給とか…塩分だってちゃんと摂らなきゃ…
「ニイナ?」
ぼんやりと考え込んでいた私に、隣に座るゲンちゃんがこちらを覗き込むように私の名前を呼んだ。
ハッとした私はすぐにそちらに顔を向けた。
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