恋愛相談をしたら妹と幼馴染が急に迫ってくるようになった

高海クロ

プロローグ

 俺、成瀬春臣なるせはるおみは平凡な高校二年生だ。身長一七二センチ、体重六十二キロ、BMI二十一の平均体型ど真ん中。特にこれといった特徴もない、最寄りのコンビニに行く道中で十人くらいはすれ違うような、量産型青少年といったところか。あとはそうだな、これでも中学時代は地域の硬式野球クラブに所属しており、全国に駒を進めたことがあるので、まあ運動は多少できる方かもしれない。補欠だったけどな。でもタイムリーヒットを一本打ったこともあるんだぜ。俺がヒットを打ったその投手は、今大阪の甲子園常連校でエースナンバーをつけているってのは、ちょっとくらい自慢になるんじゃないか。ぜひこのままプロ入りして、お立ち台で「あの日打たれた悔しさが僕を育ててくれました」とでも言ってもらいたい。一応申し添えておくが、俺の公式戦での出番はその一打席だけでチームもその後逆転負けを喫しているため、彼の記憶には俺の存在など既に残ってはいないだろう。世知辛いね。


 俺のことについてほかに述べるとすれば、兄想いでかわいい双子の妹がいることと、世話焼きな優しい幼馴染がいることと……。それからこれは、諸君らの中に例えば学校でトイレの個室に入ったやつを馬鹿にするような幼稚な精神性のやつがいないことと信じて白状するが――もしいるのなら今すぐ回れ右してYouTubeのコメント欄で下らん煽り合いでもしててくれ――俺には好きな人がいる。


 でもまあ好きとまではいかなくても、気になる女子の一人や二人くらい思春期男子なら当たり前にいるものだろう。凡庸たる俺も、例に漏れずそんな女子がいるってだけの話だ。


 俺の好きな相手――神代楓じんだいかえでは、眉目秀麗容姿端麗才色兼備……彼女を褒めそやす言葉は枚挙にいとまがないほどで、要は美少女ってことだ。つややかな黒髪は腰まで伸びていて、太陽の下で見ようものならキューティクルの化身のようにきらめいて目がくらむ。女子にしては身長も高めで、スレンダーな体系、制服のプリーツスカートから伸びる足なんて雑誌のモデルもしっぽ巻いて逃げるほどの造形美を見せている。目なんてぱっちり二重で、黒い瞳は吸い込まれそうなほど強烈な引力を湛えているんだぜ。見ればわかる、本当だ。


 しかし俺が彼女に惚れこむのはそんな単純な見た目なんかじゃない。先ほど俺は自分を「平凡な」と形容したが、実はクラスでの存在感は平凡を下回って「希薄」だったりする。しかし彼女は、そんな日陰者の俺にさえ分け隔てなく接してくれる、まるで女神のような少女なのだ。つまり俺はそんな彼女の優しさに惹かれたのであって――いや、まあこの話はいいんだ。


 結局事の発端は、そんな彼女への憧憬というか、恋慕というか、まあそんなものが昂った結果とってしまった俺の行動に起因するものだった。




――――――――――――――――――

新作です。

明日8:00にもう一話投稿し、以降は隔日8:00に投稿予定です。

暇なときに読んでやってくださいね。

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2024年12月21日 08:00

恋愛相談をしたら妹と幼馴染が急に迫ってくるようになった 高海クロ @ktakami

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