第14話 柴犬バズる
「じゃあ、僕はこっちだから」
「はい。ありがとうございました」
ダンジョンを出た後、帰り道が逆方向だったので美緒さんとはそこで別れた。しばらくダンジョンの外を歩き、自宅に向かっていたが、犬の姿から人間の姿に戻る気配はまったくない。
ということは、僕が作った勾玉の魔石はちゃんと機能しているのだろう。これで、着替え問題は解決した。
ただ、一つだけ問題があった。そう、家の鍵を開ける事だ。
「ぬぐぅううううう!!」
口に家の鍵を咥え、ドアノブにある鍵穴に差し込もうとするが、二本足で立ちながら咥えた鍵を鍵穴に差し込むのは想像以上に難しい。
鼻息を荒げ足をプルプルさせながら何とか鍵を差し込む事が出来た。
「ふう」
一旦、休憩してもう一度差し込んだ鍵を咥え回してドアを開けることに成功した。
続けて、前足を上手いこと使いドアノブを回し、押し開け家の中に入ることができた。
「ただいま〜」
今度から、家の前に踏み台を用意しておこうと思った。首にかけてある勾玉を外すと、元の姿に戻る事が出来た。
********
まさか柴犬さんとダンジョンで出会えるなんて、嬉しすぎる!!実際、家に帰って思い返すけど、本当は夢だったんじゃないかなって、つい思ってしまう。
配信で見るよりもモフモフ度が高くて、もう本当に可愛かった。ダンジョンで柴犬さんがゴブリンを倒しても魔石がドロップしなくて、『運が悪いのかな』とシュンとして耳と尻尾を垂らし落ち込んでいる姿は、申し訳ないけど可愛かった。
でも、それが普通で運は悪くないって教えてあげたら、耳と尻尾がピーンと立ち、満面の笑みで私を見つめてきた時は、可愛過ぎて心臓が止まるかと思った。
それに、柴犬さんに加工した魔石をお礼と言って頂いたけど....可愛すぎるし、優しすぎるとかヤバすぎる。それに、この加工した魔石は私が前に使ってた加工した魔石と同じ感じがする。
「はぁああ~柴犬さん可愛すぎる!!」
柴犬さんに貰った魔石を目立つ場所に飾った後、ダンジョン内で撮らせてもらった柴犬さんの写真を見ながら改めて思っていた。
この写真は柴犬さんにちゃんと許可をもらって撮ったから、決して盗撮なんかじゃないよ。
それだけじゃなく、勇気を振り絞ってダンジョンから出た帰り際に柴犬さんと連絡先まで交換できた。
そういえば.....柴犬さん、ダンジョンを出た後もずっと犬だった気がするけど....その時は緊張しすぎてよく覚えてないや。
早速、柴犬さんにメッセージで写真をSNSにあげてもいいか確認してみた。しばらくして返信が来た。
『いいよ~』
許可をもらえたので、私はさっそくフォロワー5万人のSNSアカウントを活用して柴犬さんの可愛さを広めることにした。
この可愛さを私だけが独占していたっていいけどこんな素晴らしい存在を世の中に知らしめるのは私の使命だと思う!!
『可愛い柴犬さんがダンジョンで探索』という文章とともに、今日撮った写真を10枚投稿した。
投稿後、他にも柴犬さんの写真を載せている人がいることに気づき、SNSを眺めていたらいつの間にか眠ってしまっていた。
翌朝、目を覚ましスマホを確認すると通知が大量に来ていた。
「え?」
通知の原因であるSNSを確認すると....すごいことになっていた。投稿した柴犬さんの写真全部の投稿がリツイート10万を超え、コメントも多くフォロワーも20万人に増えていた。
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