間話終 ヒロインとして失格。

 大学にはたまに行き、テニサーに食い物を探す。

 そんな毎日に、たまに潮田が目に入る。

 楽しそうだなぁ。

 素直にそう思ってしまう。

 まともな先輩と、まともな女の子。


「沢田さんかぁ……」


 食堂で大きな声を出せるようになった潮田にびっくりしながら、口をまた閉じて俯いて食べる。

 周りからは何かを言われている気がする。


「沢田さんのおかげです!」


 やめて、優しくしないで……。


「沢田さん!」


 そこで耐えきれなくなって、私は食堂から出てしまった。

 そこからだろうか。

 また潮田のことが気になってしまう。

 たまに、教室を見に行くと別の女の子とご飯を食べている潮田。


 正直に……嫉妬した。






「今日の予定はなしで……っと」


 ”ピンポーン”


 インターホンが鳴る。


「はーい」


「あ、お姉ちゃん?」


「帰れって」


「やだよ。聞いたよ?お姉ちゃんずっとヤリサーにさ」


「もう行ってないから。いいの」


「よくないでしょ?」


「ああああ! とにかく開けないから!」


「やだ、開けて」


 外をのぞくと、私と違ってまだ純粋な妹がいる。


「うるさい……」


 しばらく、妹は携帯をいじっていた。


「私、お姉ちゃんと同じ高校の男の子と会ったの」


 そういって、部屋の覗き穴にスマホをくっつけてくる。


 ”潮田輝”


 そう書かれているLINEアカウント。


「何?嫌味?」


「いや、とりあえず開けてからよ」


「そう。わかった。その代わり、潮田がどれぐらい楽しそうにしているか話したら帰ってよね」


「わかった」


 ドアを開けて、ロングヘアを揺らしながら、靴も揃えず入ってきた……。


「お姉ちゃん。家でこの人の話をよくしてたよね」


 散らかった部屋のごみをまとめながら、机に入っている私に話しかける。


「そうだね」


「柏木さんと楽しそうにしてるよ」


「そう」


「ねぇ、悔しくないの?」


「なにが?」


「だって、お姉ちゃん潮田のこと好きだったのに」


 他愛もなさそうに話す妹。


「まあ、ね」


「快楽におぼれちゃって、結局騙されたんだから」


「…そうね」


「まったく、あの時のお姉ちゃんはどこ行ったのやら」


 ペットボトルを回し、カップラーメンの殻を積み重ねる妹。


「……しらない」


 私は俯いてそうそっぽを向いてしまう。


「じゃあ、私は帰る。言っとくけど、潮田はもうお姉ちゃんの事興味なくなると思うから…」


「そう…」


 ガシャン! と扉が音を立てた。


 それと同時に、涙が出てくる。


 自分の汚れた体を見て、純愛を求めて…。


 変態だと思っていた男にあんなことを送ってまで…!


「こっちのほうが…。よっぽど変態じゃない!」


 そういって、奥歯をかみしめた彼女の口には、が分泌されていた。

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