間話③ 『快楽』と『承認』



 彼女たちは結局停学処分。

 退学にはならなかったが、その後学校に来ることはなかった。

 安堵した私。もう金髪は直せる。バイトもまた再開できる!

 とりあえず、成績は取り戻そう。

 あとどうせなら、髪色はどうせならそのままで、本物の清楚ギャルを目指そう。


 それから、私は男子からの人気も再熱したし、女子からも同情の目を向けられ、私の学校生活はいじめられる以前よりむしろ楽になった。

 そういえば、あの陰キャの名前は潮田。

 下の名前はそこまで気になってなかったけれど、私は一度コンタクトを取ったことがある。

 なぜなら、いじめの発端が潮田のリコーダーの噂についてだったからだ。


「リコーダーの事……覚えてる?」


 遠回しに聞くが、彼は覚えていないらしい。

 むしろ、私の手を引いて、結構いい感じになってしまった。

 しかも、走る彼は意外とかっこよくて、陰キャのくせに担任とは仲良くて……。


 とにかく、いい人に見えた。


「先生! 潮田の志望校ってどこですか?」


「ふーん。なに?恋か?恋なのか?」


 そういえば、私の学校は担任が変わらない。

 だからか、結構学生とコンタクトを取るのだが……あいにく。コイバナが好きな担任だった。


「やっぱやめときます」


「いや、いい。ごめん教える。待ってくれ!」


 さすがの担任も、生徒の恋を破綻させるのはごめんらしい。

 だからか難なく志望校を入手できた。チョロい。

 とにかく。志望校は少し上だった。

 もう少し勉強しないといけない。

 それから、私はギャルをやめた。


 この時から、私は彼のことが好きだったのかもしれない。




 そこから私は猛勉強し、周りのことはちっとも気にせず、ひたすらに勉強した。

 没頭。没頭。たまに憂いあり、時に妄想を膨らます。

 すると気付けば、受験は終わっていた。

 大学にはぎりぎりだが合格。校内順位は見ていなかったが、だいぶ上がっていた。


 潮田に言ってみると、何故か驚かれた。

 知らなかったのかな。私中学の時は成績よかったんだけど。

 それから、何故か潮田に、一緒に上京しようって誘われちゃった。

 けっこう、嬉しかった。

 しかも夜行バス。楽しみだったし、実際たのしかった。

 でも、潮田は思ったような人ではなかった。







 ……彼は、本当にあの噂通りだった。


 リコーダーを見せた途端。動揺して、何故か唇を奪ってきた。

 彼の唾液ほど気持ちが悪いものはない。


 なんて表現しよう。


 たとえるなら、タコの粘液と片栗粉を混ぜた感じ?

 もうどろっどろ。どんだけ興奮してんだよって。

 もう、分かっちゃうよね。信じたくなかったけれど。


 …………でも、あの唾液が少しだけまた味わいたくなったりするときがあるの。


 なんでだろうね。


 まあ、そこから大学にも行ったよ。

 友達もできて、そこからテニスサークルのマネージャーをすることになった。

 なんでも、勧誘に来た先輩もめっちゃタイプで、もうすぐに仲良くなっちゃった。

 気持ちいいもんなんだね。本当は。


 ヒロインの気分。愛されて、満たされて、戻れなくなる。


 潮田の事なんて忘れて、彼さえいればいい。

 彼は優しくて、ふわふわしている私のことを包んでくれる。


「好き。大好き」


 その思いが膨らむほどに、私は彼と一緒にいたい気持ちが強くなる。


「ねぇ? 結婚しない?」


 そう提案した日もあったっけ。

 でも、突然の出来事だった。


「好きな人ができたんだ。別れてくれ」


 彼との話は……もう言いたくない。

 それなら、潮田とかの変態のほうがまだましだ。

 それから、悲しみから、失望から……。

 私は自暴自棄になって、水商売を始めた。





 潮田にも……どうせなら見てほしいな。

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