世界は愛で、満ちている

ますみ せれな

ひとり晩酌

恋をしたと気づいた時、ひとりで缶酎ハイを飲むの。

みんなは楽しい時にお酒を飲むと言うけれど、私は違うみたい。

わかっているのに。

どうしようもなく好きだと気づいた私を、この酎ハイに喉の奥まで流してもらおう。

ああ、こんなに早く酔えるんだ、わたし。

何てコスパの良い女なのかしら。

悲しいのかな、嬉しいのかな、滲む視界で笑っているの。

もう少し早く、いいえ、遅く、どちらにせよ今ではないいつかに出会えていたら、堂々と伝えられたのかもしれない。



言えなかった、言えなかった、言えなかった。

夢追い走り出したばかりのわたしとあなた。

まだ何も言えないよ。

朝まで隣にいても、触れ合えないこの距離で、君が歌う歌を聴きながら、カラオケの椅子は少し冷んやりしていた。

夜は短いと思っていたけれど、意外と長いみたい。

冷たい夜が、秋の終わりを告げて、明るいはずの朝を連れてこない。

君はわたしを見ていないのに、月は何も言わずにわたしを見つめ続ける。

ああ、キャラメルコーンってこんなに苦かったっけ。でもちょうどいいかもしれない、甘い缶酎ハイとよく合う。甘くて苦い、ひとり晩酌。


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2024年12月19日 17:00

世界は愛で、満ちている ますみ せれな @1007m

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