イケメン高校生の山田君が「魔法」を使う為の条件は、『今、着ている服を爆発させる』こと♡

コーヒーの端

エピローグ

「うえ〜ん。やばいよ、間に合わない〜! もう諦めて、ラーメン食べに行こうぜ。」

「やかましい!言ってる場合か!あと三分でホームルーム始まる!今日は遅刻できないぞ。」

 ぎりぎり雨が降らない曇天の中、片方は陽気に、もう片方は悪天候に似つかわしい面持ちで、疾走中である。何せ、今日定刻に間に合わせなければ、十日連続の遅刻チャレンジ完走、ペナルティのグラウンド二十周(一周八百メートル)が現実のものとなる。

「それだけは嫌だ〜〜。」

「じゃ、レモンさんよ、あれ使おうぜ。」

 ん〜〜。でもな〜〜。

「レモンは渋る。よほど『あれ』を使いたくない理由があるのだろう。」

「いや、ナレーションすんな!お前発言にかぎかっこついてんぞ⁉︎」

 レモンの特製、お説教タイムもほどほどに、「しゃ〜ねえ〜使うか〜、ちょっと恥ずかしいんだよな。ぶつぶつ...」とうつむく。

「ああ〜!やっぱり恥ずかしい!この辺人通り多いしよ〜〜。」

レモン早くしないとやべえぞ!こうしている間に、定刻まで一分ちょい...。山田がまくしたてる。

いや、黙れよ! お前が待ち合わせ時間に遅れたんだろが!

「えーい!い、いくぜ!」



「さんまのしっぽ、たこのあし、世界一すてきな女の子はだーれ!」



「そ・れ・は」

「でびるちっく!レモンちゃんです!」

 走りながら、レモンがばちっ!と決めポーズ。

「うーん、二十点!」

「街でやんのは恥ずかしいんだわ!黙ってろ!」

 てめえも手伝えや!

「しょーがないなぁ。」

「りんごの甘さ!みかんの旨み!世界一イケメンな男の子は僕ぅ!山田だよーん!」



 その呪文を言い終えた後のことだった。


 おかしな二人組は宙を舞っていた。



「レモン、さっすが!ポーズに少し不満はあるけどな〜。」

「やかましい!山田のも素敵だったぜ〜?キモくて寒気がしてきやがった。」

 くっちゃべるレモンの背中からは、黒い翼が生え、地上二百メートルほどを羽ばたいている...。

 その速度は、目で捉えることが難しいほどだ。広げれば十メートルを超えるような大袈裟なそれで、彼らは近隣の方々との朝の挨拶もほどほどに、優雅な登校と洒落込もうというのだ。黒い羽根、常人には出しえない速度。ついでに、レモンの背中に座る山田。


と、


ボカーーーーーーン!


「あぁ〜!!!忘れてたぁぁぁ!!!」

 山田の服は爆発し、彼のブリーフだけが露わになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る