世の音に耳を傾けて
こむぎ
第1話
私は音が好きだ。
静かな部屋でチクタクと鳴る時計の秒針の音。
ザワザワと木々が揺れ動く音。
ザブーンと騒ぐ波の音。
でも都会は人々の声、
自動車が動く騒がしい音。
そんな都会が嫌で、私は田舎に引っ越した。
それと、私にも嫌いな " 音 " がある。
それは私の声。
中学1年生の時、
『未鳥ちゃんの声変じゃない?』と他校の子に
そう言われてから私は自分の声が大嫌いだ。
その日から私は学校に行けなくなった。
なんだか周りが私の声について話して、
笑っているような感じがしたから。
2日3日行かなくなったら、
どんどん『行きたくない』っていう気持ちが
大きくなってしまったから。
外にも出れなくなったことだってあった。
なんだか自分の声が気持ち悪い感じがしたから。
家族と話が出来ない日だってあった。
もしかしたら家族も本当は私の声を
気持ち悪いと思ってるのかもしれないと
思ったから。
そう思ってから私は声が出せなくなっていた。
だから家族とのコミュニケーションは
筆談で行っていた。
昔よりかは家族が怖くなくなった。
きっとこんな私でも支えてくれたから
信用できたんだと思う。
でも、声は相変わらず出せない。
無理やり声を出そうとすると、
あの時の記憶が蘇ってきて
喉が苦しくなってしまうから。
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