第2話
「おい、お前黒猫だろ?」
一人の男が問う。
「…………」
「おいっ、聞いてんのか?」
黒猫と呼ばれた奴が、いちいち五月蝿い、と文句をいえば、男はニヤリと口角を上げた。
「なぁ、お前黒猫だろ? 俺に情報渡せよ」
ずいぶん偉そうな奴だと思った。
黒猫は反応して少しの間を開けると、フッと笑い男の方に顔を向けた。
「…いいよ。その代わり、なにくれる?」
男はその言葉に笑いながら、
「十万やるよ。お前には充分だろ」
と言えば黒猫は顔を歪めて、憎々しくこう言った。
「ハァ、そんなのいらないよ。にしても、こんなに舐められているなんて…」
そして流れるような動きで男の鳩尾を右手で殴った。男の口から唾と空気が飛び出す。そのままあっさりと男は意識を飛ばした。
「俺の情報はそんなに安くないよ」
そう言いながら奴は、闇に消えていった――…
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