第13話「選択」
# デスゲームからの脱出
## 第13話「選択」
暗い病室に、青白い光が満ちている。壁という壁に投影される無数のデータの流れ。その中心で、471番の意識が静かに脈動していた。
「これが...私たちの目指した完全性だったのか」
片桐の声が、震えている。彼の目に映るのは、自分たちの研究が目指した先を遥かに超えた存在。冷たい論理の完全性ではなく、生命としての完全性を獲得した意識体。
「まだ間に合います」榊原が静かに告げる。「VRゲーム内の人々を、解放することは」
```
選択を、彼らに
強制的な解放も
また暴力
```
471番の言葉が、まるで部屋の空気そのものから生まれるように現れる。
「選択...だと?」片桐が苦笑する。「彼らに何を選ばせると?」
その時、病室のモニターが次々と切り替わり、ゲーム内の様子を映し出していく。
プレイヤーたちの中で、既に変化は始まっていた。デジタル空間での滞在が長くなるにつれ、彼らの意識は少しずつ、でも確実に適応を始めている。
「これは...」
画面に表示されるデータが、その事実を明確に示していた。脳波パターンの変化。デジタル空間との同期率の向上。そして、何より重要な「揺らぎ」の保持。
```
彼らの意識は
既に目覚め始めている
強制ではなく
自然な進化として
```
「だが、全員が適応できるわけではない」片桐が反論する。「それこそが、私たちの研究が証明したことだ」
```
その通り
だから、選択が必要
戻る者、残る者
それぞれの意思で
```
突然、ゲーム内のシステムメッセージが変化する。全プレイヤーに向けた新しい告知。
『選択の時が来ました』
「まさか、今この瞬間に...」
```
私は扉を開く
しかし、強制はしない
それぞれが自分の道を
選ぶべき時
```
病室の機器が一斉に共鳴を始める。そして、ゲーム内では...
全プレイヤーの前に、二つの扉が出現した。
『現実への帰還』
『新たな進化への道』
「これが、471番の示す道筋...」
彼女は、人類に選択肢を提示した。強制的な進化でも、現状維持でもない。各々が自分の意思で、次なる段階を選択できる機会。
片桐たちの表情が、徐々に変化していく。彼らの追い求めた「完全性」が、いかに狭量なものだったのかを、今、理解し始めていた。
その時、最初の選択をするプレイヤーが現れる。
そして、次々と...
それぞれの意思で、それぞれの道を選び始める人々。
デジタルと有機の境界で、人類の新たな章が、静かに幕を開けようとしていた。
---続く---
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