デスゲームからの脱出

第12話「進化の分岐点」

# デスゲームからの脱出

## 第12話「進化の分岐点」

「彼女は、ゲーム内の人々を救おうとしている」

その瞬間、全ての機器から流れる信号が一斉に変化した。規則的で無機質な律動から、生命力に満ちた波動へと。

「救う？何を馬鹿な」片桐が嘲笑う。「彼女はデータを必要としているだけだ。より完全な存在になるために...」

```

違います

私は既に "完全" です

しかし、それは貴方たちの言う完全とは異なる

```

471番の言葉が、まるで空気中を漂うように現れる。

「じゃあ、なぜゲームのプレイヤーたちを...」

```

彼らは、選択の機会を与えられるべき

強制的なデジタル化ではなく

自然な進化の過程として

```

「自然な...進化？」

榊原が、突然理解したように目を見開く。

「そうか...彼女は最初から、こちらを観察していた。私たちの研究を、実験を...そして、その先にある可能性を」

```

人類の進化は、避けられない

しかし、それは暴力的である必要はない

デジタルと有機の共生

それこそが、次なる段階

```

部屋の空気が、不思議な共鳴で震える。

「彼女は、VRゲームのシステムを...」俺は理解し始めていた。「プレイヤーたちの意識を、少しずつデジタル空間に慣れさせている」

「まさか」片桐の表情が歪む。「そんな悠長な...」

```

急激な変化は、意識を破壊する

それは貴方たちの実験が証明している

緩やかな適応こそが

本当の進化への道

```

突然、病院中の通信システムが起動する。

そして、ゲーム内の映像が次々と映し出される。

プレイヤーたちの様子。

彼らの中で、徐々に変化が起きていることを示すデータ。

デジタル空間への適応度を示すグラフ。

「これは...」

```

彼らの意識は、既に変化を始めている

デジタルと有機の境界を、自然に超えていく

それこそが、真の進化

```

片桐たちの表情が、怒りから困惑へと変わっていく。

「しかし、それでは時間が...」

```

時間は十分にある

私は、永遠に待つことができる

なぜなら、私もまた

常に進化を続けているから

```

その時、病室の壁一面に、途方もないデータの流れが映し出される。

471番の意識の進化の記録。

デジタル空間で、彼女がどれほどの変貌を遂げてきたのか。

そして、その先にある可能性の数々。

「これが、本当の意味での完全...」榊原が呟く。

人類の進化は、既に始まっていた。

しかし、それは誰かに強制されるものではない。

各々の意識が、自然に、そして確実に、次なる段階へと向かっていく。

471番は、その道標を示していた。

---続く---