最悪ゲーマーのやり直し

さくらかるかん

第1話 プロローグ

「本当にごめんなさい。私達の力ではまだまだ世界に通用しないことがわかりました。今はなんというか……燃え尽きたというか……頭の中がまとまりません、すいません……なんで負けたのかさえも……えぇと、えぇと、すいませんでした」

画面に映し出されるのは俺が一番好きで、憧れで、手の届かない最つよゲーマーの泣いている姿。舞台はBloantの世界大会、国を背負い、代表のチームが競い合う、勝負の場所。日本チームは3度目の初戦負け、帰国RTAを更新した。内容は散々で良いところは一つもなく、ただただ流れてくる試合の映像は地獄だった。「謝らないでくれよ……選手が謝ったら駄目だろうが……」

頬を走る涙。俺は画面に映る憧れの選手につられて涙を流した。


NoN(ノン)日本一の最つよゲーマーでBlueJackというプロチームに所属し、日本では輝かしい成績を収め、世界でも実力を認められているプレイヤーだ。俺はこのNoNを昔から応援してきた。理由は生き様だ。どんなに逆境に立たされようと彼女のワンプレーが世界を変える。そのどこまでも立ち向かう生き様に惚れていた。実績としては世界で唯一女性でBloantの世界大会に出場していたり、最速ランク一位を獲得など様々だ。彼女は高校で良い成績を収めながらゲームに明け暮れ、卒業と同時にプロゲーマーの道に進んだ。これは親と高校を卒業が好きに生きる条件だったかららしいのだが、その義理堅い点も彼女の良い点の一つだ。ロールはフレックスでディエもイニシもなんでも使う。その幅広いロールのせいで大会では酷使され続け、パフォーマンスが落ちているように俺は感じるが……。


「プロなんて今からなれるわけねぇし……今日も今日とて、大学行きますかね……バカほど眠いけどどうにかなるやろ」


俺は大学に向かうため、最寄り駅から電車に乗る。やばい、欠伸が……。ちょっと眠るか……。そして、俺はどうにか降り過ごさず大学の席に座る。座るのは端の上の方。良い感じに前の人に隠れてスマホをイジれるのだ。


「日本、帰国RTA更新……NoN、燃え尽きた……辛すぎる……」


なんで月曜の朝にこんな悲しいニュースばかり見ないといけないのか……ん?


「NoN引退?え?なんで?」


緊急でツイッターにあがったのはBJのエースとも言えるNoNの引退の情報だった。BJ公式から!?内容は……NoNは現役を続けることが不可能な状態となり、本人と……は?不可能な状態?何がどうなってんだ?キーボード押して、マウス動かすだけだぞ?ゲームが不可能な状態ってなんだ?精神的なやつか?肉体的なやつか?あのNoNが精神的に潰れたのか?3度目の世界大会初戦負けはそんなに彼女に影響を与えたのか?


数カ月後、BJからNoNがもう死んでしまったという情報が流れた。ネットには自殺だのなんだのと様々な情報が流れているが真実はわからない。ただ、チームの選手間でトラブルが合ったことは明白らしく、そこが自殺の直接的原因になったのではないか?と言うのがネット民の総意だった。そこから俺は普通に大学に行き、仕事に付き、人並みの人生を送ると思っていたのだが……。


「あれ?なんで中学生?ってことは2016年?なんで?」


そう、タイムリープしたのだ。

ここからはじまるのは一人のバカが全力で人生を走る物語。日本のエースを死なせず幸せにする物語。

そして、ただひたすらに想い続ける物語である。

「……まずはpc買ってもらわないとか」

そして、頭のネジが数本外れている男の話である。

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