10人目の彼女をNTRれた俺、最高に可愛い妹に恋愛的な意味で宣戦布告される
八星 こはく
第1話 私、本気だから
「で、一週間既読無視されてるんだけど、どう思う!?」
両手をテーブルにつき、叫びながら立ち上がる。店内の客が迷惑そうな顔で俺を見てきたが、構っている余裕はない。
なぜなら俺は今、できたばかりの彼女に一週間も連絡を無視されているから。
「うーん。飽きられたんじゃない? やっぱり」
可愛い顔をして辛辣なことを言ってきたのは、
くりっとした目が愛らしく、男子の制服を着ていなければボーイッシュな女子にしか見えない。
「飽きられたって、またかよ……」
「うん。今回の子、何人目の彼女だっけ?」
「……10」
「なんでだよ……! あんなに尽くしてきたのに!」
毎日こまめに連絡し、デートの時は必ず最寄り駅まで送り迎えをした。デート代だって、高校生の俺には厳しい中、やりくりしてほとんどを奢ってきた。
失敗した覚えはない。今までだってずっとそうだった。それなのに俺は歴代彼女9人に毎回振られた。
他に彼氏ができたから、という、最低最悪な理由で。
「蓮太が面食い過ぎるからじゃない? 正直、高望みし過ぎ」
「……しょうがないだろ」
面食いな自覚はある。俺は美人が好きなのだ。
そして俺は、自分が美人と釣り合うほどのイケメンではないことを知っている。だからこそとことん尽くし、積極的にアピールするのだ。
「ていうか、そろそろ帰るよ。明日も学校だし」
「……分かった」
わずかに残っていたポテトを乱暴に口内へ突っ込み、店の外に出る。
女運は全くないが、こうして話を聞いてくれる友達がいることには感謝するべきだろう。
◆
「……は?」
ファーストフード店を出て駅へ向かう道中、時間短縮のために治安のよくないホテル街を通った。
こんなところ、基本的に女子高生は通らない。そのはずだ。
なのに今、俺の目の前には
そして隣には、見覚えのない、体格のいい男。
「香苗?」
落ち着け、落ち着け俺。
弟とか兄とか、家族の可能性もある。ここが繁華街で、その上ラブホの多い通りだとしても。
だが、そんな俺の淡い希望はすぐに打ち砕かれた。
「こいつが、香苗にしつこく言い寄ってるって男か?」
日に焼けた男は、俺を見て吐き捨てるように言った。そうなの! と返事をし、香苗が男の腕に抱き着く。
「な、なんで、俺たち付き合って……」
「はあ? いい加減なことたーくんの前で言わないでよ!」
たーくん? 俺のことはずっと、櫻木くんとしか呼ばなかったのに?
「行こうぜ、香苗」
たーくんと呼ばれた男が、香苗と腕を組んだまま俺の真横を通り過ぎる。すれ違いざま、二度と香苗に近づくな、とすごまれてしまった。
「……蓮太」
ぽん、と新が俺の肩を叩いた。
新の目に映る俺は、今にも泣き出しそうな顔をしている。
「ご愁傷様」
ああ、そうか。
俺は10人目の彼女もまた、寝取られたのか。
目を閉じると、香苗との短い思い出が頭をよぎる。一目惚れした俺が必死にナンパをし、なんとかデートを重ね、告白して付き合えることになった。
身体の関係どころか、キスをしたこともない。それでも前のデートで、初めて手を繋いだ。
なのに……!!
悔しくて腹が立って、泣きそうになる。それでも我慢できたのはたぶん、似たような経験を9回もしているからだろう。
◆
「おかえり、お兄ちゃん!」
玄関の扉を開けると、制服の上からエプロンを着た
腰まで伸びた艶やかな黒髪、小さな顔にバランスよく配置された顔のパーツ。華奢で清楚で、兄としての贔屓目なしに美少女だ。
「今日のご飯、お兄ちゃんの大好きなハンバーグだよ! あれ? お兄ちゃん、なんか元気ない?」
菫が近づいてきて、俺の顔を覗き込んだ。可愛い妹の顔を見ただけで、じわっ、と瞳に涙が滲む。
俺と菫は今、一時的に2人暮らしをしている。商社勤めの父親が海外赴任になり、母がついていったのだ。
「……菫」
恥ずかしい話だが、いつまでも誤魔化すことはできない。
こんなことなら、彼女ができた、なんて菫に言わなきゃよかった。
「彼女と別れた。……っていうか、浮気されてたんだよ、俺」
「また?」
大丈夫だよ。きっとお兄ちゃんなら次は上手くいくから。
お兄ちゃんのよさを分かってくれる人が、絶対にいるから!
いつものように、そう慰められることを期待して菫を見つめる。しかし、菫は俺の予想を大きく裏切った。
「お兄ちゃん。もう、私にしたら?」
「……は?」
「お兄ちゃんのことが一番好きで、可愛くて、絶対浮気なんてしないよ?」
「いや、いやいや……俺ら、兄妹だぞ?」
菫は可愛い。歴代彼女の誰よりも美人だ。おまけに料理もできて性格もいいし、頭だっていい。
だが菫は正真正銘、俺の妹なのだ。
「お兄ちゃんと結婚する、ってずっと言ってきたじゃん」
「それはあれだろ、子供の……」
はあ、と菫がわざとらしく溜息を吐いた。
そして、いきなり俺に近づいてくる。避ける暇もなく、呆気なく俺のファーストキスは奪われた。
「お兄ちゃん。私、本気だから」
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