𝐒𝐭𝐨𝐫𝐲3

夜の外は少しばかり空気が冷たかった。


だから俺は凍える前に家に帰ることにした。


気がつくと俺はベッドの中で朝を迎えていた。


昨夜は眠過ぎて帰ってきた途端、


そのまま寝てしまったのだろうか。


でも、服は着替えてある...。


「無意識って怖いな...」


俺は静かに呟いた。




そういえば今日は暇だな。


あの子とどこか行ってみよう。


てか、あの時の夢にいた人は誰だったんだろう。


俺は考えても考えてもキリがない気がして


その人のことは一旦忘れることにした。


「なぁ、お前どこ行きたい?」


と俺があの子に聞くとその子は空中に文字を書いた。


俺はじっくりそれを見ると、


どうやら『海』に行きたいらしい。


「近くの海にでも行くか」


と呟くとその子は、こくりと頷いた。


海辺に着くとあの子は砂に指で何かを書き始めた。


俺はそれを見ていると、


どうやら名前を俺に教えようとしているみたいだった。


書き終わった砂浜には『今は海って呼んで』と書いてあった。


『今は』ってどういうことなのだろうか。


とりあえず今は気にしないでおこう。


「もうそろ帰る?それともまだここに居る?」


そう俺が聞くと、海は『もう少しだけここに居る』と砂浜に書いた。


俺が


「分かった」


と言った時には海は水平線の奥を見つめて寂しそうな雰囲気をかもし出していた。そのとき、


「あ、昨日ぶりだね」


と後ろから声が聞こえた。


振り返ると、昨日の散歩中にあった不思議なあの人だった。


「あ、その子....」


そう言いながらその人は海に近づいてくる。「ふーん...やっぱり君だけだね。そっちの道を選んだのは」


その人は俺の事を少し睨みながらまたもや不思議なことを言った。


「そっちの道ってなんですか...」


「今の君は知らなくていいよ」


あ、また『今』...。


この人はもしかしたら海のことを


知っているのだろうか。


「あの...あなたは海のこと知ってるんですか?」


「海ってこの子のこと?」


「はい」


「そっか...」


「ねぇ、海...アレはまだ置いてあるよね?」


俺の質問は無視してこの人は海に問いかけた。


『アレ』とは何だろう...。


やっぱり海と知り合いなんじゃ...。


だが、海は縦にも横にも首を振らなかった。


「あ!そういえば君の質問に答えてなかったね!!」


と突然キャラが変わったように話し始めた。


「まず僕の名前は.....今は、瞬って呼んで!」


「あと僕と海の関係は...昔の友人的な感じだよ」


「そうですか..」


「あ、時間だ!もう行かなきゃ!!」


「じゃ、また会えたらね!」


そう言って瞬...はどこかへ行ってしまった。




そういえば、


他の人から海は見えないのに


何で俺と瞬は見えるんだ?

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