Part7
宿の大食堂で食事をする客の中に、一際目立つ女性がいた。
サンフラワーの明るい金髪で、長さは腰まである。前頭部に黒いカチューシャを着け、艶々の髪は手入れされていて高貴だとわかる。青い瞳は全てを見通す透明感で、目つきは少しタレ目で、優しげな雰囲気だ。
高い身長と豊満な身体、エミリアと似た少し際どい服装をしつつも……姿勢が良く高貴な出で立ち。誰がどう見ても貴族のご令嬢であろう少女は、大勢の客入りを見て呟く。タイトな胸部のレオタードがはち切れそうで、彼女の妹とは雲泥の差であった。
「やっぱりまだ、人手は足りませんか」
木のフォークを置き、高貴な少女……アルメリア・ロヴァルトは口を拭く。
昼食は焼き立てのパンと野菜炒め、それと温かいスープだった。
満足気ではあるが、忙しそうにする従業員を見て思う、この宿は圧倒的に人手が足りないと。
(かと言って、
彼女は公爵貴族、ロヴァルト家の長女。
川辺に来ていたエミリアが言っていた、綺麗好きの姉だ。潔癖症とも言う。
サンフラワーの金髪は艶々で、輝いているようにまで見える。その仕草も振る舞いも貴族のご令嬢そのものであり、逆に言えばエミリアの口調が庶民派過ぎた。
「あ」
視線が合う。配膳をしていた、若緑色の髪の従業員と。
「アルメリアちゃん、お食事はお済みになりましたか?」
貴族のご令嬢に対し、平民のメイリンがちゃん付けで呼ぶ。それは普通に考えれば失礼に値するだろう。しかしアルメリアは、気にする様子もなく笑顔で答えた。
「ええ、メイリンさん。今日もとても美味しかったです。特にこの野菜炒め、メイリンさんのご実家である、【サザーシャーク農園】で採れた新鮮な野菜……最高でした」
眩しい笑顔で答えるアルメリアに、メイリンは嬉しそうに食器を片付ける。
「よかったわ。今日の採れたてなんですよ?」
「……美味しいのは美味しいんですが、平気ですか?お疲れに見えますけど。特に、厨房から静かに、恨み辛みのように聞こえてくる声が……ウェンディーナです?」
「あ、あはは……はい、ウェンディーナです。まだ慣れないみたいで。他の二人は買い出しに出ていますし、本来は私が調理担当なんですけどね」
メイリンは、主にこの【福音のマリス】の全ての仕事を担当している。
特に料理の腕は一流で、接客や掃除もお手の物。
しかし人手不足は否めなく、エドガーの使い魔である三体が仕事を始めてからも、まだまだ慣れない作業に四苦八苦しているそうだ。
「ですけど、ウェンディーナが作った料理も美味しいですよ。しっかりできていますし、もう少し自信を持ってくれればいいんですけどね。それに、前は生焼けだったりしましたし……」
それはアルメリアの本音だった。使い魔とはいえ、その見た目はどう見ても人間だ。しっかりと味覚などの五感も人間と同じ、もしくは優れているのだから。
その三体が使い魔……つまり人間ではないことは、客は知らない事実だ。
普通の人間ならば、聞いても馬鹿な話だと
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