不遇召喚士の異世界創世記〜ANOTHER WORLD CREATOR〜

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第一章【七つ木の森の召喚士】

第01話『少年は今日も溝を浚う』全9Part

Part1


 その国、【リフベイン聖王国】の中央に君臨する首都。

 名を【王都リドチュア】。人によっては聖王都とも呼ばれるその都には、複数の大きな噂が散見している。特に、国によって不遇職業・・・・と定められた少年の住む、王都北の近郊に存在する広き森……【七つ木の森】には。


 七つの大樹の周囲を守るように……鬱蒼と生い茂った木々の数々。

 それは深いというよりは広いといえる森林だ。七つの大樹は七つのエリアとして、水辺や砂場、林道や平地といった場所を構築し、様々なレジャースポットのようになっており、王都からの噂を聞いてやってくる愚かな人間を歓迎しているようにも思えた。

 そしてその噂の大半は、森の中央部に居を構える宿屋が主立っている。森の中央部に存在する、人々に幸福の音を鳴らす宿と呼ばれる……宿屋【福音のマリス】。


 その宿は絶世の美女たちが経営し、訪れる客に幸福をもたらすもてなしをしてくれると噂だ。王都の宿などより格安で泊まれる宿は、どの部屋も高級感に満ち。その広さと清潔感の溢れる佇まいは、客に安らぎを与える。

 宿泊客以外も利用の可能な大食堂は、格安かつ美味であり、聖王国では唯一下水の通ったその施設は、かわやに水が流れ臭いもない。

 そして最大の目玉は、宿に備えられた大浴場。【福音の湯】と名付けられたその大浴場は、温かい湯に浸かるという、水で身体を流すだけの国主流のものとは違い、大いに癒やしを与えてくれる。


 しかしその宿の大評判の影に潜む、森単体での噂は……残念ながら、悪評としても名高かったのだ。主に、その宿の真の経営者……【召喚士】、エドガー・レオマリスのせいで。




 森に響くのは、少年の笑い声だ。

 高笑いにも聞こえるその薄気味悪い笑い声は、森の木々の揺れが気味悪さを増幅させており、昼夜を問わず、その場を弁えない嬉笑はこの広い森全体に何故か届く。東西南北にある森の各入口にまで届いていることだろう。その声は森に入ってくる人間たちを怯えさせ、それがまた大きな噂とさせるのだ。


「あはははははははははははははははははっ!」


 木々のざわめきがその笑い声を拡大、増幅させて反響し、遠くでは小さく引き笑うように聞こえることだろう。

 更にはその笑い声の持ち主の行動が、その噂の信憑性の是を高まらせていた。


 ジャバジャバと、銀のスコップで水辺を掻く音を鳴らす少年。

 茶髪を泥で汚し、白いシャツも泥だらけ。腰まで浸かったその水はスコップで掻き回したせいで濁りに濁り、見る人間によっては嫌悪を抱くだろう。

 しかしその泥だらけの少年は、嬉々として溝浚どぶさらいをしていた。高笑いを空高く轟かせ、瞳孔の開いた瞳を水面に向け、一心不乱に銀のスコップを振り回す。


「あはは!あはは!あははははっ!!」


 今頃、森のあちこちでこの笑い声が響き、中央部の宿でもその声を聞き、従業員の一人がため息を吐いていることだろう。


「あーあ……まーたやってるよ、エドったらさー」


 【七つ木の森】、水辺エリア。

 少年が溝を浚う光景を、一人の少女が発見した。

 カナリーイエローの明るい金髪に、聖王国の人間を表す青い瞳。

 その服装は独特で、ハイレグレオタードのような上下一対の上に短く赤いスカートを履き、トップスは軽鎧。控えめな胸部を隠す程度の小さな鎧を纏い、その上から、背中までの長さほどの、短めのマントを羽織っていた。


 彼女の名は、エミリア。

 エドガーの幼馴染の一人、エミリア・ロヴァルト。

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